電機業界と会社の話

eSIMが普及すると携帯料金が安くなる2つの理由

菅総理が携帯料金を下げるぞ!と鼻息荒く宣言した。

ここまで言い切ったら出来なかったときのがっかり感が半端なさそうだけど、大丈夫?一応相手は民間企業だし、そんな簡単じゃなくない?と思ったのだが、この話が出てきて少し合点がいった。

 外部リンク<NHK “総務省 携帯電話値下げに向けて「eSIM」普及へ”>

たしかにeSIMが普及すれば携帯料金が安くなる可能性は高いと思う。

しかしその理由として報道されているのは、eSIMだとキャリアの乗り換えが簡単になるから競争が促進されて料金が安くなる、というロジック。あとはSIMカードの物理的なコストとか、輸送費が安くなるとか。

ちょっと強めに言い切るけども、全然分かってない。さすがは日本のマスゴミ報道。アホである。

そりゃあ乗り換えが頻繁になれば多少は安くなるだろうけど、eSIMにしたからってそんな頻繁に乗り換えるとは思えない。効果は限定的だろう。

じゃあなんでeSIMにすると安くなるの?というと店舗が要らなくなるからである。docomoショップとか、auショップとかあるでしょ?あれ。あれが要らなくなるから、コストが下がるのだ。

携帯ショップの維持費が無くなればその分携帯料金は下げられる

ちなみにキャリアのショップって全国で約8,000店あるそうで、どんくらいの規模感かというと、ファミマの店舗数が約16,000店だから、イメージ的にファミマの半分くらい。

更に携帯の契約ができるお店ってキャリアのショップだけではなく、ヨドバシカメラとかビッグカメラとかの家電量販店でも携帯を買って契約できる。

他にもキャリアの携帯ショップじゃないショップもあるので、それらを合わせるとファミマに近いくらいの店舗数があると思われる。

まあ街を歩いてれば携帯を売ってるお店は頻繁に見かけるし、コンビニくらいの規模感でお店があるんだな、と考えれば良いと思う。そんなに不便には感じないくらいの店舗を全国津々浦々に設置すると、だいたいこれくらいの数になるってことなんだろう。

しかし、消費者がeSIMを使うようになる、というより携帯の契約をネットで済ませるようになれば、店頭での契約作業は不要になるのでショップは必要無くなる。当たり前の話だ。

先日、モノを売るときに小売店のコストが販売価格の多くを占めている、という話を書いた。

洋服だと小売店は30~40%くらいのマージンをとっているし、モノによるが家電でもだいたいそのくらいのマージンをとっている。

当然、携帯を売るときも小売店(携帯ショップ)はかなりのマージンをとっていると思われる。別にこれはぼったくってるって話ではなく、便利な一等地に高い家賃で店を構えてスタッフを抱えればその程度のコストは必要になるという話なのである。お店を構えるってのは金がかかるものなのだ。

仮に携帯ショップの店舗網維持に必要なマージンが料金の30%だとすれば、携帯ショップが無くなればその30%は必要無くなる。当然である。そしてキャリアにとってはコストダウンになるんだから、その分だけ値下げする余地が生まれる。

以上がeSIMが普及することで携帯料金が安くなる理屈である。

携帯ショップは情弱を養分にしている集客装置

eSIM普及による携帯料金の値下げのポイントは、店舗維持には金がかかってるから、それを無くすにはネットでの契約を促進すればいいよね、ということ。

格安SIMを使っている人ならよく分かると思うのだが、携帯の契約なんてネットで超簡単にできる。普通に読み書きができて義務教育を終えた程度の知能があれば、全然難しい話ではない。

店舗に行かなくても契約するリテラシーを消費者が身に付ければ、携帯の料金なんて下がって当たり前なので、それを促進するために政府はeSIMの導入を早く進めようとしているのである。

しかし、docomo、au、Softbankの3大キャリアはeSIMには未対応なのである。何故かと言うと、eSIMに対応すると儲からなくなるから。

何故eSIMに対応すると儲からなくなるのかというと、ショップに人が来なくなるからである。

菅総理大臣がはっきりと言っているように、携帯キャリアの利益率20%ってのは他の業種と比較して異様に高いのだが、その高すぎる利益率を生んでる仕組みが全国津々浦々に整備されたショップ網なのである。

キャリアの高収益を支える養分乙なオプションサービス

ショップに機種変更とか乗り換えとか、新規契約で足を運んだときに、頼んでもいないのに

使い方のサポートとか

テレビ番組のオンデマンドサービスとか

ショッピングサイトへの登録とか

保険とか

有料課金系のオプションサービスを勧められたことって誰しもあると思う。要はキャリアはあれで儲けているのである。

格安SIMを使っている人なら分かると思うが、あんなオプションなんか無くても全然困らない。筆者も困ったことがないし、困ったことがあるという人に合ったこともない。というか契約してて使ったことってあります?普段から活用してるよーなんて人はほとんどいないんじゃないか。要は不要なサービスなのである。要らないサービスに加入させて養分にしているのである。

大した利便性の無いクソなサービスだから普通に宣伝しても契約する人なんていない。それでも利用者を増やそうとすると莫大な宣伝費がかかる。

しかし携帯ショップで契約のついでに勧めればどうだろう。携帯ショップにやってくるのはネットで契約するリテラシーの無い情弱である。一定数の人はひっかかって加入する。アフィリエイトに近いビジネスを店頭でやってるのだ。

お年寄りを丸め込んでオプション契約させる手口が以前社会問題になりかけたが、要はそういうことをやっても儲けているのが、20%という異常に高い利益率の理由の一つだ。

大手キャリアの看板を信用したカモがネギを背負ってお店に足を運び、あとは店頭の販売員にノルマを課して情弱を丸め込めば、チャリンチャリンとお金が入ってくるという、夢のようなボロい仕組みが出来上がっているのである。

だからeSIMみたいな、せっかくのカモが店頭に足を運んでくれなくなるような仕組みは導入したがらないのだ。導入したら利益が減るんだから拒否って当たり前。カモには黙って大人しく養分やってて欲しいわけだ。

書いててムカついてくる。菅総理がけしからんというのも当たり前の話である。

しかし、クソなサービスとはいえ実態の無い詐欺ではないし、一応ちゃんと機能しているサービスなので表立ってやめろとは言えないし、店舗に来た人に勧めちゃいけないなんてことも言えない。活用している人もゼロではないだろう。店舗を持つことを規制するのも難しい。

だから何とかしてeSIMの導入等を進めてゲームのルールを変えようというアプローチは全く正しいと思う。

携帯料金が安くなる2つの理由

ということで集客装置である携帯ショップが無くなると

  • 店舗維持のための莫大なコストが無くなる
  • 無駄なオプションに加入させられる危険性がなくなる

という2つの理由で、料金が減るはずである。

これらで飯を食ってる人達はかわいそうだが、まあそもそもどちらも消費者のリテラシーが上がれば自然と消えていくような、本質的には不要なものである。

本質的に不要なものは時間が経てば消えていくが、政府はその時計の針を早く進めようとしているんだろう。

以上っす。

こちらの記事もおすすめ!