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進む少子高齢化と進まない投資による資産形成
「貯蓄から投資へ」と言われ始めて20年くらいは経ったでしょうか。しかし今もいまひとつ「浸透したね!」とは言えないのが現状じゃないでしょうか。
FXや仮想通貨等の投機で一儲けしようとする人がいたり、「投資?分からん怖い!」と郵便局や銀行に貯金として預けっぱなしにしている高齢者や、それを狙った特殊詐欺が跋扈していたり、郵便局が詐欺まがいの方法で高齢者に保険を売りつけていたり、その一方でなかなか国が思っているような「まともな投資による資産形成」が広まっていかない日本。
しかし容赦なく進む少子高齢化が社会問題として顕在化してきて、いよいよ国のケツにも火が付いた感があります。
法や制度の整備を推し進め、投資による資産運用を強く勧めるようになってきました。
今日は若いうちから、まとまった資金が無い状態からでも始めるべき投資について解説したいと思います。
元ネタは金融庁のWebサイトで公開されている情報です。なのでぶっちゃけ金融庁が公開している情報を読めば全て分かる話なんですが、量が多くて分かりづらかったりもするので、本記事ではそれらをできるだけ簡単にまとめた形にしています。
何故国は資産運用を勧めるのか?
まず、何で少子高齢化が進んで国が投資による資産運用を勧めるようになったのか?
答えはシンプル。年金制度の破綻が不可避だからです。破綻というと言い過ぎなんですが、要は過去のような低負担高給付の年金はもうあり得ないということ。給付が少なくなることは確定していて、もう公的な年金だけでは面倒見きれないことはほぼ確定しているので、自分達で何とかしてくれって金融庁は言ってます。
これが全てなんですが、以下補足。
このあたりの話は、政府は「政府の見解と違う!年金だけで大丈夫だ!」と言っていたり、学者は「無理」と言っていたり、立場によって言っていることが全然違い、ポジショントークが酷すぎて大変分かりづらいのですが、普通に考えれば分かる話です。
国民年金、厚生年金は「賦課方式」と呼ばれていて、年金制度が設立された1950年頃には、10人で1人の高齢者を支える前提になっていました。2010年には2.7人で1人を支える構図になっており、2050年には1.3人で1人を支えることになります。支えるったてそんなもん無理に決まってます。これからはもらえる年金の額は減ります。それはもう間違いない。なので ”破綻” はしないにしても ”年金だけで大丈夫” とは、普通に考えれば言えない状況です。この ”年金だけで大丈夫とは言えない” というところがミソ。つまりは年金に”加えて”自分で資産形成が必要ということです。年金も個人での資産形成も両方必要ということ。
で、国は「みんな自分で何とかしてくれ」と言ってはいるものの、何のバックアップも無しでは政府の存在意義がない。だからそのための税金の優遇措置を設けて、個人で資産形成ができるように制度的なバックアップを進めているわけです。
国民生活が破綻したらやばいのは、政府にとっても他人事ではないですからね。ある意味一番親身に考えてくれている事業者です。
だから一番まともで間違いの無い金融商品を勧めているし、それらを使うことに税金面での優遇まで加えています。
やった方が良い、どころの話ではなく、やらなきゃほぼ確実に損するというレベルの話です。
で、日本は資産を投資に回している人の数が、先進国の中では圧倒的に少ない国です。アメリカだと50%強の人が投資で資産運用しているのに対して、日本だと20%弱の人しかやっていません。後進国だと言われていますが、逆に言えばまだまだ伸びる余地があるということ。
伸びる余地ってのは、つまりは個人の資産を増やせる余地が大きいということですね。
老後に資金が不足する!「2,000万円問題」
さらに先日話題になった「2,000万円問題」。老後30年間の生活で約2,000万円が不足する、という話ですが、今後寿命は更に延びるので不足額は2,000万円どころでは無くなるとも言われています。その話の根拠がこちら↓

singi_kinyu/market_wg/siryou/20190412.html>
これは何を言っているのかと言うと、高齢夫婦世帯で毎月約5.5万円お金が足りず、定年後30年生きるとしたら5.5万円×30年×12か月=1,980万円足りなくなるよということです。
しかしこちら、突っ込みどころが色々あって、例えば住居費が13,656円/月となってます。仮に賃貸だとしたら、月13,656円の家賃のアパートって、そんなもん存在するの?あったら教えて欲しいくらいですが、持ち家でローンを払っている状態だとしてもこんな金額あり得ないです。なのでこれは持ち家でローンを完済していることが前提になっているわけで、そうでは無い場合(借家暮らし or 持ち家だけどローンが残っている)はもっとかかるということになります。住む地域にもよりますけど、+5万円くらいかかるかな?そうするとさらに2,000万円不足するということになりますね(;´Д`)
高齢者で食費に64,444円もかかるの?とか、その他消費支出って何?54,000円も毎月かかる?とか、色々突っ込みたくなるし、生活レベル次第なところもあるけど、長生きすればするほど不足額は多くなるわけだし、年金だけで十分だね!と言えないのは確実でしょう。取り崩していく財産がある程度必要なのは間違いわけです。
金融庁のワーキンググループが提出した資料にこれが書いてあったため一時期取り沙汰され、政府は「そんなことないもん!年金だけで大丈夫だもん!」と言って必死に否定していましたが、これを見て皆さんどう思います?細かい突っ込みどころはあるにせよ、大筋で金融庁のワーキンググループの言ってることの方が正しそうじゃないですか?
国が用意している資産形成のツールとは?
ということで政府も口では「年金だけで大丈夫!」と言いながら、きちんと資産形成のツールは用意してくれています。
その国が進めるツール(金融商品)がこちらの3つ。
・積み立てNISA
・iDeCo
・確定拠出年金
この3つの何が良いか、すなわち他の金融機関が売っている金融商品と比べて何が優れているのか。
一番の利点は、税金面で優遇されること。これに尽きます。
積み立てNISAであれば、運用益(得られた利益)にかかる約20%の税金がかからず、iDeCoや確定拠出年金だったら掛金が所得控除の対象となり、かつ積み立てNISAと同じで運用益も非課税。
これが無茶苦茶でかい。一例をあげると↓
積立金20,000円/月、利回り2%、積立期間30年の場合、205万円の非課税効果
積立金20,000円/月、利回り2%、積立期間20年の場合、120万円の非課税効果
非課税効果とは、本来納めるはずだった税金のこと。納めなくてよくなったこの金額分だけ得をするということです。かなり大きな金額であることが分かると思います。更にこのお金も運用されて複利で増えます。税金の優遇措置というのはこれだけ大きな効果があるんですね。
もう一つの利点は投資のセオリーに合った投資ができるというところ。
投資のセオリーとは?
そして、投資にはセオリーがあります。これ超重要。これも筆者が独自に主張している話ではなく、金融庁も勧めている投資の世界での常識です。
それが以下の3つ。
・早く始めて長期で続ける
・毎月一定額を投資し続ける
・バランスよく投資する
一つずつ補足していきます。
・早く始めて長期で続ける
これはこの後の項目で詳しく説明しますが、長く続けることがセオリーなので、非課税であること、手数料がかからないこと、毎月分配金を受け取らない、ことが大きく効いてきます。
・毎月一定額を投資し続ける。
何故これがセオリーなのか。”買い時”なんてものは分からないからです。投資って要は安いときに買って、高いときに売れば儲かるって話なんですが、じゃあいつが安値でいつが高値なのか?いくらなら安値と言えて、いくらなら高値と言えるのか?こんなことは誰にも分かりません。
分かる!って人もいるかもしれません。個人の意見は尊重しますが、そういう人を世間では相場師といいます。博打の世界です。博打が悪いとは思いませんが、ここで言っている ”資産形成に使うまっとうな投資” とは違うものです。
いつが高値でいつが安値なのか、要は買い時がいつかなんて誰にも分からないので、毎月定期的に同じ額を投資し続けるんです。毎月一定額を投資し続けると、必然的に「安いときに多く買って、高いときに少なく買う」ことになるから。これをドルコスト平均法と言います。
当たり前ですが、一定額を投資していれば、価格が上がったときは買う数は減るし、価格が下がったときは買う数は増えます。
資産の金額 = 価格 × 数
です。投資の結果って、価格だけでは決まりません。どれだけの数を買ったかで資産の額は決まります。
・バランスよく投資する
これも、いつが買い時なのかは分からない、のと同じ話で、”どこを買えばお得なのか” は分からないからです。
どこ、と言っているのは個別の企業とか、国とか地域のこと。調子良く業績や経済が伸びるのがどこか、なんて未来のことは誰にも分かりません。
なんとなく想像はできますよ。その自分の予想に身を委ねて全額そこに突っ込むのも悪くはないのですが、これも”資産形成に使うまっとうな投資”とは言えない話です。
全てをバランスよく買っておけば、特定の企業や地域に引っ張られて大きな損をすることもなくなるはず。
例えば、日本企業の株だけではなく、アメリカ企業の株も買っておけば、日本の経済がダメになってもアメリカが大丈夫なら、自分の資産も守れます。
そうすると必然的に投資信託を使うことになります。投資信託というのは、運用会社が勝手に分散投資をしてくれて、バランス良くしてくれるものだからです。
以上、この3つのセオリーを守っていれば、基本的にはリターンはプラスになるとされています。
↓は金融庁ワーキンググループの資料からの抜粋です。
【長期・積立・分散投資の有効性】
長期・積立・分散投資による効果は、積立が長期であればあるほど、投資先を分散すればするほど、収益がバラつきにくくなる特徴がある。
1985 年以降の各年に、毎月同額ずつ国内外の株式・債券に積立・分散投資したと仮定し、
各年の買い付け後、保有期間が経過した時点での時価をもとにして運用結果を算出すると、保有期間が5年ではマイナスリターンも発生するが、
保有期間が20 年になるとプラスリターンに収斂し、さらにそのバラつきも小さくなる。
出典)第21 回市場ワーキング・グループ 厚生労働省資料<https://www.fsa.go.jp/singi/
singi_kinyu/market_wg/siryou/20190412.html>
「積み立てNISA」「iDeCo」「確定拠出年金」は投資のセオリーを守った運用ができる仕組み
・積み立てNISA
・iDeCo
・確定拠出年金
の3つは、(よっぽど変なことをしない限り)この3つのセオリーを守って運用できるようになっています。というかセオリーにあった、すなわち優良な金融商品を集めて作られているのがこれらの仕組み。
かつ手数料もかからず、毎月分配型でもないため長期の運用に向いた商品になっています。
更に上述の通り税金面での優遇措置もあるとなれば、”セオリーにあった投資で資産形成” をしようと思うのなら使わない理由が無いくらいに この3つが最良の選択肢です。
元本保証を求めると結果的に損をする
以上の3つのセオリーの背景には “経済は成長するものである” という原則があります。
日本みたいに長年経済成長していない国ってのは稀で、基本的には世界経済全体は成長しており、これからも成長するので分散投資でその流れに乗れば、基本的には資産は増えるということです。
もちろん世界の未来を完璧に見通すことなんてできないので、3つのセオリーを守れば100%絶対に大丈夫、なんてことは言えませんが、そういう風に世界は動いているので、リスクを取りつつも3つのセオリーを守っていれば、良い結果が得られる可能性が高いということ。
しかし、日本人の約半分が確定拠出年金で元本保証型を選ぶそうです。損することを嫌がって投資をしていないということ。引退間近のタイミングであれば、リスクを取らないっていう選択肢はアリなんですが、十分に投資を続けれる時間があるのであれば、積極的にリスクはとるべきです。じゃなけれ良い結果は生まれません。

jp/singi/
singi_kinyu/market_wg/siryou/20190412.html>
なので結果的に損するわけです。
“リスクをとる”とはどういうこと?
積極的にリスクをとっても長期間の運用が可能であれば良い結果が生まれます。なので早めに始めてリスクをとるようにすれば良いのですが、ここで一点注意。
良く “リスク” って言葉が使われますが、これは “悪いことが起こる可能性” のことではなく “変動する可能性” という意味にとってください。ってかその用法が本来正しいのです。
つまり ”リスクをとる” というのは「悪い結果になることを覚悟する」という意味もあるのですが、同じくらい「良い結果を期待して行動する」という意味も含まれています。
この資産形成を目指すときにとるべき ”リスク” とは「値動きがあり」「長期的に価値が上がると思われる」ことです。そういったものに投資するのが、この場合の正解です。
長期的に価値が上がるって何やねん、って話ですが、ここからは個人的な見解も入るので、ご参考までに。
例えば食料とか原油とかのいわゆるコモディティー(生活必需品)はそうだし、綿花とか羊毛とかの原材料とかもそうでしょう。世界の人口は今後も増え続けます。特にアジアで。そうするとそういったコモディティの需要は確実に伸びます。多くの人が必要とする=価値があるってことです。そして原油とか食料ってそんな簡単に生産量は増やせません。新しい油田がそんなにボコボコ見つかるわけないですよね。よって長期的には世界経済の発展に伴って値が上がるのです。なのでそういうものを扱っている会社というのは長期的には伸びると言えます。
簡単な話ではないのですが、今日明日というレンジで考えちゃいけません。20~30年の長期で大局的に考えれば短期的な見方とは違った物事の見方ができるはずです。
また、そういうモノの見方をすると、世の中違って見えて面白いと筆者なんかは思うのです。
金融庁の資産運用シュミレーターを使ってみよう
分かった、3つのセオリーに沿って投資をするには、国が進める、「積み立てNISA」 「iDeCo」 「確定拠出年金」 を使うのが良いのね。で資産は2,000万円くらいは無いと厳しそうなのね、はい。それは分かったけど、じゃあ毎月いくら積み立てれば良いのさ?と思ったら、金融庁のWebサイトにある ”資産運用シュミレーション” を使って計算するのが簡単で分かりやすいです。
<https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/moneyplan_sim/index.html>
※このシュミレーターは誰でも使えます。
これを使って、積立目標金額1,000万円と2,000万円のとき、毎月いくらの積立額が必要かとシュミレーションしてみました。

積立期間 20年
想定利回り5%
の場合で 毎月の積立必要額は 24,329円

積立期間 30年
想定利回り5%
の場合で 毎月の積立必要額は 12,015円

積立期間 20年
想定利回り5%
の場合で 毎月の積立必要額は 48,658円

積立期間 30年
想定利回り5%
の場合で 毎月の積立必要額は 24,031円
利回り5%は全然現実的な数字です。ちなみに、預貯金、保険商品の一般的な利回りと比較すると↓
① 預貯金 0.001%
② 学資保険/個人年金(保険屋さんが売っている金融商品) 1.0%
③ 国,金融先進国が勧める運用方法 4.5%~6.0%
もう全然③が有利なことは一目瞭然。
ここで注目は積立期間 20年と30年の差。10年違うと毎月必要な積立額が2倍ほど違うんですね。これが複利の力。資産形成に時間をかけられるというのは圧倒的に有利なんです。
もう一つ参考までに、2,000万円積み立てようとしたときに、利回り 1%、4%、6%でそれぞれどのくらいのお金が必要か、計算したのがこちら
利回り1% 47,661円/月 30年間で1,716万円
利回り3% 34,321円/月 30年間で1,236万円
利回り5% 24,031円/月 30年間で865万円
利回り5%で30年間運用すれば、倍以上になるということです。しつこいですけど、長期間の運用がどれほど強力か、よく分かりますね。
まとめ
以上、税金が優遇されること、セオリーにあった投資ができることから
・積み立てNISA
・iDeCo
・確定拠出年金
を国は強く勧めており、特に長い投資期間を確保できる現役世代は必ず検討すべき話です。
何でこういう話を記事にしたかというと、銀行とか証券会社の窓口では基本的にこういう話は聞けないから。
郵便局の不正の件が分かりやすいですが、大なり小なり彼らは自社の利益を第一に行動しているので、顧客目線の提案というのはやりづらいのです。
何それ、って話ですがそれが現実だから仕方がない。そんな中で筆者の知る限り、金融庁がある意味一番親身になって情報公開してると思うので、それらを紹介させていただいた次第です。
次回は金融庁のWebサイトで勉強した筆者が、具体的にどういう風にこれらを活用しているかを紹介したいと思っています。ちょっと先になりそうですが。。
今日はここまで!ではでは~。
↓続き。