電機業界と会社の話

製造業でも当たり前になりそうな事業買収の話

先日 “ガイアの夜明け” で放送されたこちら↓が話題になっている。

外部リンク<ガイアの夜明け “大戸屋”買収劇の真相〜人気定食チェーンはなぜ狙われたのか?〜>

筆者も番組を見た。そういや最近は大戸屋へ行ってなかったが、こんなことになってたとは知らなかった。

敵対的TOBでの買収ということで、世間ではあんまり好意的に受け取られていないように思う。

ルールに則って行われた買収なんだから良いも悪いも無いのだが、筆者もなんとな~く良い印象は受けなかった。

やっぱり日本人的には “敵対的” っていう一方的にやり込めた感がどうしてもひっかかるんだろう。

話し合いで合意していない、調和が無いってのが日本人の宗教観にそぐわない。聖徳太子も激おこである。

まあそういう何が良くて何が悪いのかの話は今回はおいとくとして、飲食の世界に限らず、いつの間にかM&Aの話なんて全然珍しい話ではなくなっている。

いつの間にか普通の話になったM&A

敵対的買収、ってのは滅多に聞かないが、筆者の会社でも資産の売買なんてのはもはや当たり前で、人も含めて事業を売ったり買ったりというのは頻繁に聞くようになった。

まあ筆者がいるのがリストラ繰り返してる電機業界ですし、もはやね、買ってくれるところがあるだけマシみたいな話もいっぱいあった。

リストラで売ってばっかじゃ会社がやせ細っていくだけなので、成長投資的な買ってくる方の話もぼちぼちあったけども、

そんなドタバタの中でM&Aの仕組みも整い、日本の事業者自身もスキームに慣れてきたということもあり、そういう切った張ったのM&Aがある意味普通のことになりつつある。

“ヒット商品で事業再生” はもう無理なエレクトロニクス業界

もういつのことやらって話だけども、かつては家電で世界を席巻してでかくなった日本の電機業界。

しかし家電、いわゆるコンシューマーエレクトロニクスはもうダメである。白物とかカメラとか、かろうじて頑張っているカテゴリーはあるものの、基本的に市場はしぼむ方向。どう頑張っても時代が必要としていない。

中国やインドの市場があるじゃんって?新興国では日本企業の高額な商品が伸びていく余地は少なくて、普及を担うのは地場の企業の領域である。

ということで放っておくと日本のエレクトロニクスメーカーは老いてしぼむなので、何か新しいことを始めないとダメなのである。

そりゃそうだけど、新しいことって何よ?って話だが、IoTビジネスだ、Society 5.0だ、自動運転だ、とか色々と象徴的な大きなテーマはある。

ただどこもそれらに取り組んでいるものの、まだまだ漠然としててベネフィットがはっきり見えていないし、利益も出ていないので、モヤモヤしながらやっている人も多いのが現状だろう。

とはいえ規模の大きな事業体であればそういう大きなテーマへの取り組みも組織的にやれるからマシな方で、そうではない小さな会社や事業部は「どこに向かっていいのか分からない」という状態のところも多いだろうし、かなりの閉塞感を感じていると思う。

そしておそらく、そういう状態の会社の多くがパッと思いつくのは、自社の技術を使って新商品を作ってみる、こつこつヒット商品を育てる、という「陸王」みたいなやり方だろう。

単品のヒット商品で苦境を切り抜けるってのは分かりやすいし、やりがいもある。夢があるし、ビジネスやるなら一回はそういう商品をやってみたいと筆者も思う。(っていうか一回やって盛大に失敗した。)

しかしデジタル化が進んだ電機業界だと、そういう古き良きモノづくりでの一発逆転劇は、おそらくもう難しいだろう。

いくら技術があったところで、単品のアイデア商品で会社を再生させるくらいの莫大な利益を得るってのはほとんど不可能だろうと思う。

デジタル化が進んだことで、家電ってのは何らかの大きなビジネスモデルやエコシステムの一部に組み込まれてないと、単品では意味を成さなくなっているからだ。

日本の家電がダメになった理由の一つがまさにこれで、スマホなんかが分かりやすいので、別の記事で解説してみたい。

M&Aが事業展開の肝になるエレクトロ二クス業界

一つの技術や商品じゃダメってのは会社の規模とは関係ない話なので、大企業だって同じ苦境の中にいる。

自社でコツコツ育てた技術や商品だけじゃもう無理だし、ましてやSociety 5.0的な壮大な話を実現させるだけのリソースを自社だけで賄うのは不可能である。

TOYOTAとかGAFAのレベルでも無理である。小さな会社だと尚更である。

ということでこれからは協業をベースにして新規事業が進むことが多くなると思われる。

業界の垣根を超えた協業が盛んになり、その流れの中で特許を持ったスタートアップ企業や比較的小さな企業や事業を、大きな企業がM&Aで取り込みながら事業を形にしていくような、

おそらくそういう話が増えていくと思われる。

今まではメーカーより商社とか飲食とか、サービス系の事業会社が活発にM&Aをやってるイメージだったが、これからはメーカーの新規事業もM&Aをベースに進むようになる。

そうするとメーカーのエンジニアやスタッフでも、会社の仕組みを作ったり、出向してマネジメントしたりという今までとは少し毛色の違うスキルが求められるようになると思う。

まあ、ますますややこしくなるというか、小難しい話が増えそうである。うわめんどくせぇ。

以上です。

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