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有楽町の千葉スペシャルで学んだ靴のお手入れの話

おしゃれは足元からってよく言われますが、コーディネートでも足先は目立つ箇所です。

革靴は常に綺麗にしてかっこいいパパでありたいのですが、靴磨きにあまり時間はかけなくないし、調べれば調べるほど色々と道具も細分化されていてこだわりの世界に入っていくというか、面倒なんですよね。簡易に済ませたいと思っているのは私だけではないはず。

今日はそんな方々に是非紹介したいお店『千葉スペシャル』のお話です。

千葉スペシャルとは

今は有楽町駅を出てすぐのところにある、交通会館1Fの軒先で営業している靴磨き屋さんなんですが、靴磨き界のレジェンドと言っても過言ではないスペシャルなお店です。

近年はテレビでもちょくちょく紹介されています。

かつてはガード下で営業していたのですが、行政指導によって路上営業ができなくなり、しばらくの間は近くに車を停めてお弟子さんを元居た営業場所に立たせてお客さんの靴を受け取って車の中で磨いて返すとか、郵送で対応するとか、色々工夫されていたようです。

そして顧客に大きな会社の役員等が大勢いて「無くなってもらっては困る」とその顧客達が働きかけて交通会館で営業場所を確保し、今に至ります。

交通会館での営業再開のときに、ユニフォームはユナイテッドアローズさんから、椅子と道具箱は乃村工藝社さんから好意で支給されたとのことで、どちらも経営者が千葉スペシャルの常連さんだそうです。

千葉スペシャルの料金、営業時間、場所

料金は1足で1,100円。

営業時間は以下の通り。

月曜〜金曜 09:00〜19:00

土曜 09:30〜19:00

日曜・祝日 お休み

一回の靴磨きにかかる時間は約10分ほど。

場所は有楽町駅を出て目の前の交通会館1F、三省堂書店の前の軒先で営業されています。

 参考リンク<千葉スペシャル

常に行列ができているのですが、土曜日の11時まで、もしくは平日の昼間が比較的空いています。また、真夏は比較的空いています。路上営業で暑いので。行列ができているときは10名以上並んでいたりするので、できれば空いている時間帯を狙っていくのが良いです。

千葉スペシャルの靴磨きのクオリティ

もうエピソード聞いただけでレジェンド感が漂う千葉スペシャルですが、顧客から絶大な支持を受ける理由はその靴磨きのクオリティーです。一回やってもらえばわかるんですが、もう圧倒的です。唯一無二。

1.ピカピカにしてくれる

これはもう一目瞭然。見ると顔が映り込みます。素人がどんなに頑張っても無理なレベルでピカピカにしてくれます。初めて見たときはビビりました。めちゃめちゃ気分が上がります。

2.早い

綺麗に鏡面磨きで光らせるだけなら他でもできるところはあるけども(ブリフトアッシュとか)他のプロから見ても圧倒的なのはそのスピードで、左右合わせて10分程度で完了させるってのは驚異的とのこと。どうやったらそんなに早くできるのか分からないそうです。

3.自分でやる手入れがほとんど必要なくなる

 「これがうちの真骨頂」と千葉さん(親方)は強く主張されています。

 「ちょっと汚れたと思ったら固く絞ったタオルで水拭きするだけで良い。それだけでまた綺麗になりますから、今後は自分でクリームなんかは塗らないで。来店頻度も3か月に一回くらいで良いよ。」

と言われます。靴を見れば千葉スペシャルの顧客かどうか分かるようで(浮気するとバレます)、初めていくと「お客さん、うちは初めて?」と聞かれるので、はいと答えると上記の解説をしてくれます。

1美しさと2速さについては、一回行けばその場で分かるのですが、3については時間が経ってみないとすぐには分からないんですよね。ただここに通っている筆者の経験上、本当の話と言い切れますね。

何でこんなことができるのか、については後述します。

千葉スペシャルで磨いてもらった筆者の靴

下記の画像は筆者の私物で、週に1~2回のローテーションで履いているformeの革靴です。革はカーフレザーで、元々滑らかな質の良い革が使われていますが、前回千葉スペシャルで磨いたのは半年以上前です。それでこの綺麗さです。

forme Blucher Plain Toe
1年前に購入
前回磨いたのは約半年前
formeの靴はまた改めて紹介したいですね
着画だとこんな感じ
太陽光の下だと十分に光ってます

その間に行ったケアは、

・ブラッシング

家に帰ってきて靴をしまう前に毎回軽くブラッシング。ほこりが溜まりそうな縫い目の部分としわになっている部分を中心に、磨くというよりほこりを落とす程度に軽く。

・水拭き

2週間に一回くらい濡らして絞ったタオルで拭く。雨に降られて泥がついたとか、汚れたと分かるときも絞ったタオルで汚れを拭き取る。

これだけです。クリームも何も一切使っていません。それでこの状態です。磨いた直後の靴にもインパクトがあるんですが、半年何にもしていない靴でこの状態ってのが如何に凄いことか、分かっていただけるでしょうか。

ついでにもう一足。12年前に買ったリーガルもまだキレイです。

もう一丁。12年前に買って履き続けているリーガル。
こちらも前回磨いたのは半年前。

水拭きを提唱する千葉スペシャル

千葉さん(親方)は、靴の汚れを取るには水拭きだけで良いと仰っています。革靴の水拭きって聞いたことありますか?筆者は革靴の手入れについて書かれた読み物で、水拭きを推奨しているようなものは見たことありません。

「親方、それ何故ですか?」と聞くと

「靴に付く汚れって何ですか?それが分かれば簡単な話でしょう」(親方)

「泥汚れとかほこりとかですかね?それらは全部水で流れるものだから水拭きで良いということですか?」(筆者)

「そうそう、そういうこと。なのにクリームだなんだってベタベタ付けてさ。自分で汚してるでしょう。」(親方)

「???自分で脂をつけてると???」(筆者)

「そう、自分で汚してるんだって。」(親方)

靴を磨きの最中に聞くと色々と語っていただけるのですが、職人気質の方ですから分かりやすい説明はしてくれません。分かるまで聞いて話を掘り下げましょう。

話を伺う限りでは汚れを取るのに水拭きを提唱される理由は理にかなってるように思えます。たしかに普通に日常生活をしてて靴に油汚れってつかないですよね。水たまりを踏んだり泥が跳ねたり、ほこりがついたり。これらは水で落とせます。油を使うお仕事をされていれば付くので石鹸や界面活性剤を使わないと汚れがとれないでしょうけど、千葉スペシャルのお客さんはドレスシューズを履いているオフィスワーカーがほとんどでしょうから、大抵の人は水拭きで良いはず。

それなのに市販のクリームを塗るってことは、靴の表面に油を塗っているようなものだ、というのも分かります。市販のクリームって乳化性クリームですから油が含まれてます。

しかしですよ、千葉スペシャルでも乳化性クリームは使っています。市販の乳化性クリームを使うとダメと主張される理由は何なのでしょうか。

千葉スペシャルのクリーム

「うちは特注のクリームを使っている」と千葉スペシャルの皆さんは仰っています。

ではそれがどんなものなのか。長く通っている中で伺った千葉さんやお弟子さん達のお話しを総合すると、おおよそ以下のようなもののようです。

1.口に入れても大丈夫な成分を使っている。

すぐ横で食べ物を扱うお店もあるので、きつい溶剤なんかは使えないし、手にも悪い。手に悪いということは靴の革も痛める、とのこと。

これはおそらく有機溶剤のことを言っているようで、市販のクリームにはトルエン等の有機溶剤が含まれており、これらは当然ですが人体に有害なもの。お話を聞く限りでは千葉スペシャルで使っている溶剤はおそらくエタノールが主成分のようです。

2.クリームのコロイド粒子が細かい。

市販のクリームはコロイド粒子(クリーム成分の粒)が大きいので靴の革に浸透していかない。しかし千葉スペシャル特性クリームは粒子が細かいので浸透する。つまりは原皮をなめす工程と一緒。革に脂を入れているんだ。皮にしっかりとクリームが入っているから、乾いてきても濡れたタオルで少し水分を与えてやれば復活するんだ、とのこと。

筆者が思うに、これが重要な気がしています。革には目に見えないレベルの小さな穴が開いていて、市販のクリームはその穴より粒子が大きいのでクリームが中に入っていかず表面に残る。これを指して市販のクリームは革を汚しているだけ、と仰っているんだと思います。

たしかに、原皮をなめす工程では元々皮に含まれている腐敗しやすい脂を取り除いて別の脂を注入することで皮を柔らかくしています。皮を柔らかくすると書いて『鞣す』(なめす)です。表面に塗るだけでは革は柔らかくならず、逆に乾くと固いクリームの層が残ってしまうんでしょう。

市販のクリームが全く革に浸透しないのかというと、実験して確認した結果を知らないので何とも言えないのですが、そもそも脂を浸透させる必要があるという話は理にかなっています。

千葉スペシャルのクリームはそれを高いレベルで実現可能で、だから短時間でピカピカになるし水拭きでケアできる、ということなんでしょう。

もちろんノウハウはこれだけではなくて、他にもクリームの成分とか磨き方とか色々と秘密はあると思います。

当たり前とされている既存のやり方に疑問を持って研究を重ね、科学的な根拠に裏打ちされた新たな手法とマテリアルを生み出した、というのはかなり凄いことだと思います。控えめに言っても超優秀なエンジニアですよ。というかこの業界での研究がどこまで進んでいるのか、門外漢の自分には全く分からないのですが、もしかしたらイノベーションと呼んでも良いような、そんなレベルの仕事をされているのかもしれません。有楽町の路上で。

そう思うと1,100円の代金もお安く感じてしまいます。

余談

ちなみにその場で磨いてもらう以外にも、預け入れて磨いてもらうメニューもあります。お値段は同じ1,100円なのですが、こちらは路上で磨いてもらう場合と違って数回に分けてクリームを浸透させるので数回通ったのと同じ状態にできるため、どちらかというとこちらを推奨したいそうです。

以上、書いてて思ったのですが、単価が1,100円でかかる時間は約10分程度、そして行列ができてひっきりなしにお客さんが来るって、行列ができる人気ラーメン屋さん並みか、それ以上の売り上げ高があってもおかしくないですよね。

ラーメンと比べて材料等の原価がほとんどかかってないであろうことを考えると利益率は半端なく高いでしょう。

であれば店舗を構えても良さそうなのに、なんでそうしないんだろう。路上って当たり前ですけど夏は暑いし冬は寒いし、結構過酷な環境ですよ。それでも路上にこだわるのは何故なのか。

老いてなお路上のカリスマであり続けるみたいな。なにそれやばいかっこいい。今度聞いてみよう。

長々と解説させていただきましたが、このために有楽町まで足を運ぶだけの価値があるお店だと思います。

行ったついでに家族でランチ、とできればベストですね。有楽町、銀座界隈でベビーカーOKのランチスポットはまた改めてご紹介したいと思います。

ではでは。

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