電機業界と日本の会社のよもやま話

最近の大企業の早期退職募集と、背景にある価値観について考えたこと

先日KIRINの早期退職募集についての記事を書きました。

案の定、その後も多くの企業で早期退職募集の発表があり大企業での人員整理が加速しています。

 外部リンク<日経新聞「味の素が希望退職募集 50歳以上の管理職100人」>

 外部リンク<日経新聞「LIXILグループ、早期退職者募集」>

 外部リンク<日経新聞「ファミマ、希望退職800人募集 スリム化へ全社員の1割」>

もはや働かないおじさんおばさんの整理は今のうちにやって当たり前、という空気感になってます。

日本企業の中に居て感じる、マネジメント層の価値観と現実の齟齬

筆者の勤め先は電機メーカーなんですが、職場の管理職は40代以上が大多数を占めています。で、その管理職のほとんどが”上”を目指すべき、という考えなんですよね。

“上”ってのは、社内でのポジションや、担当する仕事のレベル、自身のスキル等、色々な意味がありますが、要は貪欲にスキルアップして今より高いレベルで会社の役に立つことを志向すべき、上を目指すのが正しいことだ、ということ。そしてそういうモチベーションが持てないのであれば、本人に問題があるか、もしくはそう思えるような環境を用意できない会社に問題があるので、何とかしなければいけない。そのように考える人が多い。

まあ生真面目というかなんというか、そういう思考だからこそ管理職になるんでしょうね。

ある意味当たり前のことにも聞こえますし、そういう上昇志向の価値観を否定するつもりはないのですが、実際にはその価値観で構成された世界は成り立たないのでは?と思います。だって全員が同じようにゴリゴリにスキルアップして物凄くできるビジネスマンになっても、その人達が相応に活躍しようと思うとその人数分だけポジションが必要なわけですが、そんなにポジションを用意できるんですかね?ポジションを増やすには、当たり前ですけど会社の売上が増えて組織が拡大し続けることが前提になります。

しかしですよ、会社が右肩上がりで大きくなるなんて話を無邪気に信じられますか?会社は株主の手前、右肩上がりで成長しますよっていう計画を立てざるを得ませんし、オフィシャルな計画である以上はそれを前提に物事を進めないといけませんが、それって建前みたいなもので、現場の従業員の感覚としては「ほんまかいな。」ってのが正直なところでしょう。どこかに胡散臭さを感じて、腹落ちしてないと思います。

そんな状況で「もっと上を目指せ!」って言われても、どこか白々しさを感じるわけです。

この辺りに論点がある気がします。

20~30代と50代の従業員の思考

例えば現在50代で平社員の人が、今からスキルアップして管理職を目指そうとか思いますかね?そういう、普通に考えてもう出世するチャンスが無い人達からすると、「スキルアップって言われてもさ、今更意味無いじゃん?無駄無駄。」と思うのが自然だと思います。筆者がその人の立場でもたぶんそう思います。それでも頑張ろうと思う人はいるかもしれませんが、おそらく圧倒的な少数派でしょう。

だからそういう人達に「スキルアップして頑張って!」って言っても意味ないわけです。当たり前です。見返りがないんだから。

一方で20~30代の人達は今後会社内で出世できるチャンスは大いにあるんですが、こちらも出世意欲や上昇志向は薄い。

 外部リンク<ITmedia ビジネスオンライン “日本人の出世意欲、アジア太平洋地域で「断トツの最下位」”

「最近の若いやつはやる気が無い!」と否定的な文脈で語られることが多い話ですが、上昇志向の強い人もいますし、十把一絡げに語るのも良くないと思います。しかし20~30代の多数がこういう考えになるのは自然なことだと思います。だって”出世して収入増やして豊かな人生を目指す”という話が成り立つのは、会社が右肩上がりで成長することで期待値が上がる話なんですから、右肩上がりでの成長が成り立たない時点で期待値の低い”美味しくない”話なわけです。だから美味しくない話には乗らないってのは合理的な考えです。右肩上がりで成長するという昭和の夢みたいなものに呑まれてなくて、ちゃんと見極められてるとも言えます。やる気がないとか、論点はそこではないんです。

筆者の現場感覚だと、1980年生まれあたりがその価値観の分岐点になっているような気がします。それより上だとまだそういう昭和的価値観の影響力が強いし、下だと醒めてる感じです。これは何故なんだろうか。。

型にはまった、右肩上がりで上を目指す”昭和型”ではもう語れないキャリアプラン

そもそも会社なんてものは不完全な人間の集まりなんです。自分一人じゃ何もできないから、寄り集まって事業をやっているんです。たまにいますけどね、「俺は優秀だ!何でも分かってるし、何でもできる!」って自信に満ち溢れた人。だったら独立すれば?って話なので、本当に優秀な人は実際に独立しますし、そう言いながら会社に残っている人は大抵は勘違いした痛い人です。

一人じゃ何もできないから、色んな人が集まって組織を作って、その中で自分の得意なことをやって世の中の役に立つことするってのが会社の本来の姿でしょう。だから不完全な人間同士、お互いをリスペクトして役割分担していくってのが望ましい姿のはず。全員エースで4番だったら強いチームなのかっていうと決してそうではないし、そもそもそんなチームは存在し得ません。のはずなのに、何故か日本の企業の中にいると型にはめて考えてしまうんですよね。

みんな上を目指さして当たり前、ある年齢ではこういうポジションに就いていなければならないし、こういう役割をこなしていなければならない、こういうスキルを持っていないといけない、と。リストラをやるときも年齢に決まりを設けているように、この”型”は年齢がポイントです。

これがまさに”年功序列”と言われるもの。年の功と序列はセットなので、年の功だけあっても序列が見合ってない人はその組織の秩序を乱す人になってしまうわけです。型にはまってないと居場所がなくなるって、結構怖い話です。型にはまってないから居場所が無いんだから出て行ってくださいね、ってのがたぶん今のリストラです。

古き良き日本社会の象徴みたいに言われ、安心して働ける条件みたいに言われる”年功序列”ですが、以上の話を踏まえるとあんまり健全な価値観には思えない、もう役割を終えている仕組みだと思うのは筆者だけじゃないはず。

価値観の転換はいつ起こるのか?

ということで断言しますが、日本の経済がまた右肩上がりで成長し始めない限りはこういったリストラの話は続きます。リストラそのものが悪いこととも思わないですが、なんとなく違和感というか閉塞感を感じる話であるのも事実。

そういう昭和的な”上を目指して当たり前”という価値観から、多様性を認めるダイバーシティと言われる方向に価値感が動かない限りはこの噛み合わない状況が続き、次の成長のステージには行けないのは間違いないでしょう。

若い世代を中心にだんだんと変わってきているのは間違いないんですが、古い価値観で成功した人達が物事を決める立場にあるので、大きく変わるにはまだまだ時間がかかると思います。そういう世代が引退していく時間を考えると、5~10年くらいはかかるんじゃないかと思いますが、どうでしょう。

今日はここまで!

ではでは~。

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