社会情勢とビジネストレンド

日本の自動車産業が家電産業みたいに壊滅するという怖い話

自動車産業は日本の基幹産業である。誰がどう見ても日本を支える基幹産業である。

昔は電子機器産業も日本の基幹産業だったけども、今や日の丸電機はボロボロ(一部は今も頑張ってるけど)。

なので今の日本を支えている製造業といえば間違いなく自動車産業である。

 トヨタ

 日産

 ホンダ

 マツダ

 スバル

 三菱

 スズキ

とか、大きな自動車会社がたくさんある。

自動車メーカーは、自動車本体を組み立ててる企業だけども、自動車自体がメカの塊なので組み立て以外にも部品として鉄鋼、ガラスなどの素材はもちろんのこと、メカ部品、電子部品も大量に使うため、産業としてのすそ野が物凄く広い。

ものづくり以外でも、自動車保険があったり、ローンなどの金融サービスがあったり、オートバックスみたいなパーツの小売り店があったり、整備工場があったり、ガソリンスタンドがあったり、そういう周辺のサービスも含めると途轍もない人数が自動車に関連した産業で働いている。

そんな感じで文字通り日本の経済、というか日本の雇用を支えてる産業なので、健全でいてくれないとマジで困るわけです。

しかし近い将来大きな変革を余儀なくされるのはほぼ間違いない。しかも100年に1度レベルの超大きな変革が起こる。ちょっと考えれば見通せる、確実性が非常に高い未来である。

変革っていうとオブラートに包んだ表現だけど、ぶっちゃけ壊滅すんじゃねーか、ってのが大方の見方である。

景気が悪いから利益が減るとか、そういう「耐えれば戻る」というレベルの話じゃない。もう元には戻らない、構造的な変革が起こるという話。

具体的な形としては電器産業で起こった構造変革に近いと思われる。

電器産業は死にそうになってのたうち回って苦しんで今の姿に落ち着いてるんだけど、自動車産業も同じ苦境を経験することになる。

(まあ電器の苦境はぶっちゃけまだ終わってないし、これからもまだまだ続くんだけども。個人的には次はPanasonicがやばいと思う。)

日の丸家電が没落した要因とは?

過去、テレビとか、携帯電話(スマホ)とか、カメラとか、オーディオとか、PCとか、カテゴリ毎に増減はにあるものの、家電の世界市場というのはだいたい一貫して伸びている。市場は伸びているんだけど日本の企業はその波にに乗れずに、落ちぶれてしまった。なぜなのか?

新興国の追い上げとか、日本の高齢化とか、リーマンショックのせいとか、自国の人件費が高いとか、色々な環境要因はあるんだけども、そういうのは大抵世界中みんな一緒。別に日本の企業だけが被害を受けて、極端に不利な環境で競争を強いられていたわけではない。

単純に日本の家電メーカーがデジタル化というテクノロジーの進歩についていけなかったからである。

日本の技術力は世界一ぃぃぃぃ!と信じてる方々には恐縮だが事実である。

(ただ強いて言うなら日本の硬直的な雇用制度は、テクノロジーの進歩を阻害した要因かもしれない。これは日本企業が不利な環境での競争を強いられていたと言っても良いかもしれない。)

電器産業を襲ったデジタル化の波とは、すごく簡単に言うと「製品の部品点数が激減した」ということ。半導体のテクノロジーが発達したことで、たくさんあった細かい部品がどんどんLSI(大規模集積回路)に取り込まれていき、部品点数が大きく減ったことで、製造技術が価値を失ったのです。

そもそも自動車も家電も、基本的には部品を集めて組み立てる産業で、たくさんの部品を組み合わせて製品を作る産業。なので組み立てる部品点数が多ければ多いほど、設計や部品には厳しい精度が求められる。

寸分の狂いもなく同じ部品を大量につくり、精度を上げるのが難しい部品があれば他の部品の工作精度で吸収し、性能のバラツキ無く大量に組み立てることができる製造力というか、匠のすり合わせ力こそが日本の製造業の付加価値だったのです。

というか今でもそう。

例えば自動車の部品点数は10万点と言われている。基幹部品のエンジンだけで1万点。自動車は凄まじい数の部品が組み合わさって超複雑な動きをするメカの塊。更に内部でガソリンを燃やしてエネルギーにするので、エンジンには物凄い負荷がかかる。

従って使われる部品にはすさまじい加工精度と耐久性が求められる。ほんのわずかでも仕様からずれた部品があれば、それが積もり積もって完成品に不具合が出る。

自動車の製品不良は人の命に係わる話なので、たとえ1万個に1個でもバラツキなんてもってのほか。許されない。

だから細やかな仕事ができて、すり合わせが得意な日本の匠の力が生かされ、それが世界一の自動車産業国を作ったわけです。

家電産業も同じ構造だったんだけど、どんどん部品が集積回路化(半導体)に取り込まれていったことで、部品点数が減り続けた。

そうすると部品一個一個の精度は今までより全然低くて良いという話になり、組み立ても容易になり、別に匠の技なんか無くても製造できるようになる。

製造自体に付加価値が無くなるので、そこで勝っていたメイドインジャパンは価値を失ったのです。

匠の技が必要無くなり、高価な製造装置を買ってくれば大量生産ができてしまう半導体部品に価値が移ってしまったため、人件費が安くて電気代が安い場所に大規模な半導体工場を作れる企業が有利になり、資金を集めて投資ができる企業が勝つというパワーゲームになってしまった、というのが日本の家電が凋落した背景です。

電気自動車が引き金になって自動車産業は崩壊する

で、自動車産業でも同じことが起ころうとしている。どういうことかと言うとEV化、つまり自動車が電気自動車になっていくことで同じことが起こるということ。

電気自動車になることで自動車の動力が電気になり、家電と同じように半導体などの電子部品とモーターの塊になり、自動車の部品点数は10万点から1万点くらいに激減すると言われている。

そうすると今まで培ってきた製造力の価値がどんどん薄まってきて、誰でも自動車が作れるようになる。

部品を作っていた工場も今ほどは必要ない、10分の1くらいで良いという話に話になる。

更に部品点数が減って組み立てが簡単になればコストも大幅に安くなる。超安くなるということ。

消費者としては安いのは嬉しいけど、製品自体の付加価値が激減して会社は今ほどは売上を稼げなくなるし、必然的に利益も減る。

電気自動車になるとはそういうことである。とにかく部品点数が大きく減ることが一番インパクトがでかい。

電気自動車はエコだから、ガソリン車から電気自動車にシフトすべき!サステナブルが大事!とかそういう意識高い系のウソ臭い話はどうでもよくて(電気自動車は原理的にエコではないです)、自動車が家電化することで、巨大なサプライチェーンで成り立っていた自動車産業が崩壊し、産業構造が変わる。これが電気自動車が普及することによる一番大きなインパクトです。

自動運転が実現すると自動車が売れなくなる

更に既存の自動車産業に大きな影響があるのが自動運転の実現。自動運転車が実現し普及することで、自動車の販売台数は激減する。

何故か?

よくよく考えて欲しいんだけども、今世の中に存在している自動車で、今この瞬間に動いているものは何台あると思います?

高い金額出して買った車だけど、使ってる時間で一日のうちどれくらいだろうか?休日だけ?昼間に買い物行くときだけ?通勤で使うだけ?

ぶっちゃけ車庫とか駐車場に止まってることが大半じゃない?

そう、ほとんどの車は動いているより止まってることの方が多いんですよ。

せっかく買ったのにもったいないでしょ?

そんな状態で自動運転が実現したらどうなるか?

車庫で眠らせておかずに勝手に外出て走ってもらって、移動したい人に乗ってもらってお金をもらうという、無人タクシーが可能になるわけです。勝手にウロウロしてお金を稼いでくれるし、街で移動したい人もタクシー感覚で自動運転車をつかまえて利用できる。

支払いはドアのカギも兼ねたsuicaでキャッシュレス決済で行うとかね。仕組みは色々と考えられる。

そんな感じで勝手に車に走ってもらえると、車は勝手に社会貢献してくれれば良くて、車庫や駐車場で眠らせておく必要がなくなるわけです。

これまでの自動車の販売台数って、自動車の稼働率が低いことが前提の販売数量だったわけです。だからたくさん売れた。

それなのに稼働率が激増したらどうなるか。数は必要なくなるのです。というか車を所有する必要性すらなくなるかもしれない。地域で所有して常に道を流してる車が必要な台数だけあれば良い。

要はカーシェアが格段に容易になるわけです。

そうなると自動車の販売台数ってどれくらい減ると思います?稼働率が倍になれば台数は半分になる?稼働率3倍で台数は3分の1?4分の1?想像しかできないけど、激減することは間違いでしょう。

そうすると、日本にたくさんある自動車会社ってどうなると思います?とい半分くらいは無くなる、というか必要無くなるのです。

そういう未来になると理解すると、こういう話↓も全然おかしな話ではないと思えるわけです。

<外部リンク>日本経済新聞 “日産・ホンダ、政府が統合模索 FT報道、関係者は否定”

自動車産業の終焉とともに日本のものづくり神話も終わる

・部品点数が激減する

・自動運転化で販売台数が激減する

というのはどう頑張っても避けようが無い流れ。

このままだと日本の自動車産業は崩壊するという危機感は、トヨタ自動車の豊田章男社長の話を聞いてるとひしひしと伝わってきます。

ある動画では「日本のものづくりを守りたい」と仰っています。冗談でも大げさでも何でもなく、事実として自動車産業の崩壊=日本のものづくりの崩壊、だと理解されているということです。

そんな強烈な危機感の中、強力なリーダーシップでトヨタを生まれ変わらせようとしています。超巨大企業を変革するって並大抵のことじゃないわけで、上手くいくかどうか全然分からない。けど今やらなきゃ日本の産業が死ぬ。そういう局面だと誰より理解して取り組まれているんでしょう。

以上、これからの自動車業界の動向は要注目、という話でした。

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