電機業界と会社の話

商品の本質とは関係ない価値を訴求するメーカー

ナイキのCMが炎上しているそうな。

筆者も見た。が、まあなんというかバタ臭いCMである。

スポーツには差別を乗り越える力がある、と言いたいのだと思うが、欧米風のポリコレかっこいい、みたいなノリで作ったのだろう。

大半の日本人にはリアリティを感じられない創作感アリアリの作りで、さらに題材にしたのが朝鮮人の差別というセンシティブな内容だから、多くの方々のカンに触るのも分かる。

チョ〇高が近くにあった人なら分かると思うが、戦闘力的な意味ではチョ〇高の生徒の方が圧倒的に上で、進学校の大人しい日本人生徒なんか普通にカツアゲされてたりしたもんだ。朝鮮人をいじめる日本人とか、そんな命知らずの奴いたっけ?って感じ。良い悪いの話ではなく、そういう情景の方が多くの人にとってはリアリティがある。

そういうリアルを知らずに欧米風のポリコレのノリで作るからバタ臭くなるし、クリエイティブとしても三流以下なんだろう。

と、NIKEのことを悪く言ってはみるものの、見方を変えると日本のメーカーだって似たようなことをしてる。

こういう商品の訴求の仕方ってメーカーに勤める人にとっては笑えない話だったりするのではないか。

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そもそもNIKEみたいな営利企業が道徳の皮をかぶって炎上商法まがいのことをする理由って一体なんなのか?

ターゲットに対するブランドロイヤリティを上げるためとか、一応マーケティングとして色々考えてやっているつもりなんだろう。

しかしそんなもん大衆の耳目を集めるのが仕事の広告屋とかクリエイター界隈の方法論でしかなくて、スポーツ用品の本来の価値とはぶっちゃけ関係無い。

スポーツにはハンディキャップや差別を乗り越える力がある、と言いたいなら障がい者スポーツを題材にしてもいいよね?そもそも差別の話とスポーツ用品というただの道具に何の関係あるの?NIKEの道具を買えばパフォーマンスが上がって差別を乗り越えられるのか?まじで?そういう安直な話なんすか?

屁理屈つけて結び付けてない?と感じる人も多いと思う。

企業は競争してるので、他の企業と商品を差別化できてなんぼである。他社と同じことをやってたら潰れてしまう。当たり前である。

メーカーなら自社の商品が他社のモノより優れていないといけない。

スポーツ用品なら、早く走れるとか、遠くまで飛ばせるとか、ケガしずらいとか、吸水速乾機能とか、軽いとか、丈夫とか、使いやすいとか、値段が安いとか、道具としての機能が高くてなんぼである。

でもスポーツ用品みたいな成熟した商品カテゴリーだと、単純な機能で差別化するのはめちゃくちゃ難しい。いまどき大抵の商品は見た目も機能もそれなりに仕上がっているし、普通に使う分には全然問題ないレベルのものが多い。

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そんな状況の中でも機能的な商品を作り、差別化しようと思ったら材料の研究開発が必要だったり、試行錯誤に長い時間がかかる取り組みが必要になってくる。

メーカーにお勤めの人なら分かると思うが、そういう取り組みは簡単に成果なんか出ない。10年単位で時間がかかることもあるし、思ったような成果が出ないこともある。商品本来の価値で勝負するってのはかなりツライものなのだ。

そうすると、成果があがるまでは宣伝広告で何とか差別化して売上を上げようとする。そのときに商品本来の魅力を訴求するなら全然真っ当なのだが、ついつい安易な方向に走ってしまうのもまた人情。

より多くの人に見てもらえれば売上が上がるので、目立とう、見てもらおうと刺激的な表現に走る。

電器業界だってこういうことはちょくちょくやっている。

パナソニックが水素水とか言って浄水器売ってるのなんて末代までの恥だろうし、シャープのプラズマクラスターは未だに嬉々として宣伝してるし、ナノイオン?マイナスイオン?

そういう限りなく黒に近いグレーな、まともな技術者なら正気じゃやってられないエセ科学みたいなことを平気でやっている。そんな話であってもお金を積めば通るし、とりあえず目立てば目先の売上は上がる。

しかしそれは本来の商品の機能とは違うものである。言葉や見た目で装飾して無理やり差別化してるのである。つまり本来は価値の無いもので売上を立てているということ。言い方は悪いが虚業である。

でも売れてるんだからいいじゃないか。消費者は喜んで買ってるよ!って?ほんとか?

高い機能をうたって期待値を上げて売ったところでそんな価値はそもそもないわけで、買って使った人の満足度は期待以上のものになっていると思う?期待値以下の満足度しか与えられていないのではないか?それで商品やブランドのファンになってくれると思う?すげぇ!やっぱりパナソニックの水素水いいね!次もパナソニック買おう!なんて思う?

そういうことを繰り返してきて、パナソニックもシャープも、会社としての業績がどういうことになったか。それが答えなんじゃないのか?

大金積んで広告宣伝やって売上上げるのはいいけど、それは商品としての確かな魅力を補強する行為じゃないとダメなんじゃないか。そういう虚業は結局麻薬みたいに自信を蝕むんじゃないか。

だってエセ科学が褒められる会社で、まじめに頑張って研究開発やろうって思う?あほくさくね?普通に考えて。

メーカーってのは一生懸命ものを作って、モノを通じて世の中に便益を提供する会社である。

どんだけ苦しくてもそこから逃げてちゃらいことしても碌なことにならないと思うんで、気を付けよう。

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