Huaweiへの本格的な輸出禁止令が先月発効された。既に色々と報道もされているけれども、Huaweiを相手に商売をしていた日本企業は多く、特に電子機器産業への影響はかなり大きい。
輸出禁止、というとどことなくまろやかな表現に感じるけども、事実上はアメリケンが絞め殺しにかかってる感じである。日本の大手メディアは ”米中貿易摩擦” と表現しているけども、”米中戦争” と言った方が正しかろうと思う。ミサイルは飛ばないけど相手を制圧しにかかってるんだから。
で、そんな中で日々仕事をしていると「国家が民間企業をいじめるのはどうかと思う」という意見が散見される。
まあ日本の企業にとって短期的にはいいことなんて一つもないのでビジネスマンとしては憤る気持ちも分かるんだが、たぶん中国と日本では企業の仕組みが全然違うってことを理解していないからこういう意見が出てくるんだろう。
ということで中国社会における企業の仕組みについて簡単に解説したいと思う。
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中国で強い企業の大半は中央・国有企業で約70%は国の企業
中国ってのは共産主義国なので基本的に企業は国有である。国有企業のうち中央政府が直接管轄する企業を中央企業という。
この中央・国有企業で働く人が就労人口の20%、GDPの40%を占めている。
一方で1978年からの改革開放で民間企業の設立も可能になっている。で、Huaweiも民間企業である。一応は。
2019年のフォーチュン500のうち中国企業は119社がランクインしているが、
そのうち中央企業が60社、国有企業が28社、民間企業が31社となっていて、約75%が国の企業である。
一応民間企業の設立はOKになっているものの、主役は依然として国有の企業だということである。
特に自動車なんかは顕著で、大手は全て国有の企業になっている。
解説が必要無いくらい、日本の企業とは全然違うのは自明である。
中国政府による企業支配の方法
企業の支配方法は単純で、基本的に政府が100%出資している資本関係で支配しており、中央・国有企業の幹部は基本的に政府の役員が任命される。
共産主義国の国有企業なんて、生産性最悪のダメダメ企業でしょうってイメージだが、近年では効率性を重視するために国の資本の保有比率は下げていく傾向にあるそうな。資本主義的な改革が進んでおり、かつての国有企業とは違っていてフォーチュン500にランクインするくらいに強くなっているのが現状。
一方で人事は政府(というか共産党)が依然としてがっちり握っていて、幹部は政府の役員という状況は変わりない。
じゃあ民間企業は日本みたいに独立してビジネスをやっているのか、というと全然そんなことはなくて、民間企業も政府しか把握できていない情報を得たり、支援してもらう必要があり、便宜を図ってもらわないとやっていけないので、大なり小なりつながっているのが当たり前。というかつながってないとボロクソにいじめられるから必須なのである。
省や企業によってつながり方とか規模は様々で、役人の親族を受け入れていたりってのがわりとポピュラーだと言われているが、何らかの形で政府とつながって、政府の意向を伺いながら事業をやっているのが中国における民間企業の現状である。
しかし情報統制されているのでそのつながりは一切表に情報が出ていないのが普通。いくらネットを探っても絶対に出てこない。
Huaweiは民間企業で、アメリカに中国政府とのつながりを指摘されているが、証拠らしきものは一切出回っていない。
公式には政府と関係無いことになっているのである。
中国でビジネスやるのに中国共産党との付き合いは必須
しかし現地でビジネスをやれば分かる話なんだけど、政府とのつながり無しに中国でビジネスをやるとか不可能で、ビジネスの相手が国有だろうと民間だろうと、中国企業と付き合うには中国政府との付き合いが肝で、特に自動車産業に深く入ろうとすると政府との関係構築は絶対に避けて通れない。
従って中国でビジネスをやる上で超大事なのが政府に対する渉外活動で、中国で成功するには必須である。それも下っ端の官僚と付き合う程度じゃ全然ダメで副部級(深センとか広州とか上海の地方政府の市長とか省のトップのレベル)にアプローチできていないと、渉外活動をやっていると言えないレベル。
欧米とか日本の企業は現地法人が渉外活動をやっているのが普通。ドイツのシーメンスなんかは結構な人数(20名くらい?)の渉外専任部隊を設置していて普段は局級(官僚とか2級、3級の地方政府の市長とか局長レベル)の人とべったり付き合って仲良くなっておいて、節目で国級(中央政府の委員長とかの幹部レベル)と話す場を設定してもらったり、とにかく一緒にご飯食べて役人(共産党幹部)と仲良くなるのが渉外部隊の仕事。
いやいやそうは言っても大っぴらに賄賂を渡したりしたら汚職になるんじゃないの?と思うじゃない?それはその通りで、”一応” 法律はあり汚職は摘発される。なので ”捕まらないようにいかにグレーゾーンを攻めるか” が渉外担当の腕の見せ所なのである。
そこは外資だろうと中国国内の企業だろうと一緒で、その辺はある意味とってもフェア。
ジャックマー(アリババの創業者。日本で言うところの楽天の三木谷さんみたいな人。)の名言「政府と恋愛はするが、結婚はしない」というのがあって、政府との付き合い方を非常に分かりやすく表現している。
特定の政治家や役人とべったりになって結婚のレベルまでになってしまうと目を付けられたり、そいつが失脚するときに共倒れになるので、そこまでやらずにほどほどに付き合っていくのが渉外の肝なのである。
米中戦争なんて関係ねー!と深入りしていく会社も
また宇宙開発とか自動運転とか先端半導体とか、そういう先端技術の企業は完全に政府の指示下でやっているので、100%政府の言うことを聞かなきゃいけない立場にある。
しかも特に金、というか大規模な補助金で政策を通して企業を釣るのが中国政府のやり方で、失敗して損することも覚悟の上で補助金をばらまいてやらせる。国家主導で大規模に開発投資をやってるイメージ。
とまあ、中国企業ってのが政府(共産党)無しでは語れないなんてことは現地を知ってれば常識なので、Huaweiは民間企業なんですぅ!といくら言ったところで、あんだけ巨大で先端技術をやってる企業が中国政府と無関係なはずが無いってのは考えなくても分かる話なのである。
そんな感じで本格的にHuawei潰しが始まり、進みつつある米中戦争。そんな状況下でも、んなもん関係あるかボケ!って感じで日本のパナソニックとかは意に介さずがっつり中国政府(共産党)と付き合ってたりする。フォルクスワーゲンとかドイツ企業もそんな感じ。
まあこんな状況なので、入り込みすぎててぶっちゃけやばいと言われているけども。そういう会社の状況は間違いなく今後大きく変わっていくので要注目である。
以上っす。