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ホアキン・フェニックス「JOKER」を観ての感想

先日、レイトショー(というかミッドナイトショー)であれば子持ち家庭でも映画鑑賞できる!と提案しましたが、実際に「JOKER」を観に行ってきました。都心とはいえ、やっぱり深夜の映画館は空いていて快適。帰りだけ難儀しましたが、たまにはいいかな~程度にはおすすめできそうです(^^;)

そして今回は若干のネタバレを含みますが、「JOKER」観ての感想です。話題になっている作品ですが、大変良かったです。ってかもっかい観に行きたい(><)。「今の社会」に対する問題提起を含んでいる作品なので、やっぱり今観に行くのがベストな作品だろうと思います。

 参考リンク<映画「JOKER」オフィシャルサイト>

好きなシーン?全編良いんですが、アーサーがゆるいブリーフ履いてウロウロしてるシーンがキモいおっさん感が出てて一番好きです。

主人公 アーサー・フレック

どんな主人公かというと↓

幼い頃に母親の彼氏に虐待されて障害を負い

母親はその虐待を見て見ぬふり

精神を病んで入院して

退院できてもなかなか仕事はなく

ようやく就けた仕事もブラック職場

上司はクソ

同僚も平気で人を陥れるクソ(優しいいい奴もいた)

子供にさえコケにされ暴力まで振るわれる職場環境

家に帰れば病気の母親の世話をしなければいけない

世間は暗いニュースばかり

貧しい暮らし

それでも一生懸命やって少しのやりがいも感じてたけど

そんな職場さえ理不尽な理由でクビにされた

障害があるから言動が普通の人と違うのは仕方ないのに

不気味な奴と世間から邪険にされる

社会のエリートからは人間扱いされない

カウンセリング相手のソーシャルワーカーは冷たいけど唯一の話を聞いてくれる相手

そんなカウンセリングも社会保障費カットで打ち切られ

投薬治療も受けられなくなった

コメディアンになりたいという夢のために一生懸命努力した

だけど精神を病んでいて人と笑うポイントが違うので素質は無い

人気のテレビ番組はそんな自分をネタにして笑いものにする

恋人ができたと思ったけど

それも自分の妄想だった

妄想癖のある母親から自分は本当は大金持ちの子供なんだと騙されて

親の愛を求めたけれど

本当は自分は天涯孤独の身だと知らされる

もはや失うものは何もない

社会的弱者が追い詰めれていく物語

そんなみじめなおっさんを追い詰めたらどうなるか。人間の尊厳を奪い続けたらどうなるのか。追い詰められ虐げられ続けた社会的弱者がどうなるのか。

そんなもう書いていて悲しくなるような何の希望も無いみじめなおっさんだけど、正当防衛で犯した殺人事件が世間の注目を浴びて、はじめて世間が自分の存在を認知した気がしたと。

JOKERはそうやって生まれた(最後はそれすらもジョークです的なシーンがありましたが)、というか社会が生んだ?、という物語です。

現代社会を映したリアリティと今作の魅力

現代日本でも十分にあり得る話というか、京アニ放火事件や川崎19人殺傷事件に限らず、大小問わず実際に起こっている話なんじゃないかと思わされます。(今回のJOKERは自分を陥れた相手にしか暴力をふるっていませんが、バットマンの中でのJOKERは無差別殺人を起こす凶悪な犯罪者です。)

いわゆる「無敵の人」が起こした犯罪で犯人に一切の同情の余地はないのですが、背筋が寒くなる思いますがします。「異質な人がやったこと」で済むのか?弱者を追い詰める社会って結局追い詰めて虐げた分、社会の側に色々な形ではね返ってくるんじゃないか?色々と考えさせられます。

そんなある意味胸糞の悪い話なんですが、シーンの一つ一つが大変良くできており、70年代のニューヨークをモチーフにしたゴッサムシティの荒んだ情景がリアリティいっぱいに描かれています。窓からアーサーが街を眺めてるシーンとか、何気ないんですけど素敵な画になってたり。

大画面いっぱいにみじめなおっさんの顔がどアップで映し出されるんですが、何故かいつまでも見ていたい、終わってほしくない!ずっとJOKERを見ていたい!そんな気持ちにさせられます。特に主人公 アーサー・フレックがJOKERになってからの吹っ切れ具合というか、狂気をはらんだ動きが大変魅力的。主演 ホアキン・フェニックスの演技が凄いと言われていますが、納得ですね。最初はゆるいブリーフ履いた金の無いキモイおっさんなんですけど、だんだんと迫力が出てきてJOKERになっていくという、その振れ幅がすごい。ただ座っているだけのシーンなのに目が離せないっていうね。いやもっと見ていたかった。

社会の在り方を考えさせられ、映画としてのエンタメ性も高い、ハイレベルな俳優の演技と、名作と言っていい作品だと思います(^^)。

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