今回紹介したいのはパンツ専業ブランドのNEAT。
紹介と言っても筆者は関係者でもなんでもなく、純粋な一消費者でただのファンです。
とっても良いパンツだからファンとして紹介したいのと、NEATの人気の理由を考えると昨今のトレンドが見えてきて面白いからので、その辺の話も交えて語りたいと思います。。
Contents
パンツ専業ブランド NEATとは
2015SSからスタートしたブランドで、NEATとは英語で“きちんとした”“行儀の良い”という意味。
トップスはTシャツ、足下はスニーカー、でもパンツだけはきちんとしたものを履く、それだけで上品なスタイルになるから、という意味が込められているそう。
メンズのコーディネートは印象の大部分がボトムスで決まるというのは古今東西良く聞く話。
感度の高い層、特にアパレル関係者からの評価が高いのですが、生産数量があまり多くなく、扱うお店も少ないためなかなか手に入れづらいパンツです。
NEATの基本モデル
別注でツナギのモデルもあったりするようですが、基本的にはフルレングスのモデルは
ワイド、ベルトレス、テーパード、フライト、オーバーオールの5型で、
毎シーズン生地だけ変えて同じ型で展開されています。特に人気なのはテーパードとベルトレスのようです。
裾幅がテーパードで19cmくらい、ベルトレスで20cmくらいで、履きこなしやすいテーパードシルエットデザインになっているのが特徴。
(裾上げ必須のパンツなので個人差有り。あくまで筆者の場合。ちなみに筆者の身長は170cm後半でノークッションで仕上げてこの裾幅。)
一方でワイドは裾幅約25cmとかなりのワイド感があり、特徴的で大変おしゃれなのですが、迫力が半端ない。
更にフライトとオーバーオールもかなりお洒落で良いのですが、デザインがかなりマニアックなので使いやすいのは比較的シンプルなベルトレスとテーパードでしょう。
(一般論ですが、裾幅は細めの方が履いたときにコーディネートがまとまりやすいです。手首も同じことが言えますが、衣服の先端部分である足首部分はノークッションでシワを無くしたり、細めに見えた方が野暮ったさが無くなります。なのでロールアップしたり裾上げしたりして裾を整えるのは、基本的な着こなしの手法です。)
おすすめはテーパードモデル
筆者のおすすめはテーパードモデルです。
一番裾幅が狭く着こなし易く、合わせやすい形です。
最近は取り扱うセレクトショップも増えてきたようなのですが、それでも2019AWのコットンカルゼ生地のモデルはどこのECサイトでも即日完売。
それも瞬間蒸発というかほぼ一瞬で完売、場所によっては予約で完売していたようで、正直ビビりましたね。
使い易そうな注目度高めの生地ってこともあるんでしょうが、ちょっと前まではシーズン途中でもある程度残っていて、ここまで幻のアイテムみたいなことはなかったと思うのですが。。
筆者は店頭でこの19AWのコットンカルゼ生地のテーパードを買ったのですが、そのときも行列にこそなっていないものの平日の昼過ぎにも関わらずひっきりなしにお客さんがやってきて買っていっていました。
ブラックのサイズ46を試着していたら試着室の外から「ブラックの46はもう無いですね~、ごめんなさい。」という会話が聞こえてきて、ひやひやものでした。

カラーはブラック

テントクロス生地のモデルや別注モデルは特に人気
5月にはNEATの代表作であるチェコ軍のデッドストックのテント生地を使ったモデルの再販(通称テントクロス)があり、販売開始前に整理券が配られ2日でほぼ完売。



7月中旬には南青山のセレクトショップ L’ECHOPPE(レショップ)の別注でNEAT USAという新型が発売され、こちらも整理券配布前に100名ほどが並ぶ大行列になり即日完売。

筆者は両方ともに参戦して何とか目当てのカラー、サイズをゲットできたものの、あと15分遅かったらたぶん買えなかったですね。。
※NEAT USAの紹介記事はこちら↓。併せて読んでみてください。
価格は3~4万円台というドメブラの中でもちょいお高めの価格で、昨今の衣服としては高価な部類。
にも関わらず消化率が毎シーズン100%近く、人気の生地を使ったモデルはほぼ即日完売というのは素直に凄い。
まあマニアックなものなのでマニアに受けている、と言った方が正しいのでしょうけども、まだ世の中にこんだけ物好きが多くいるんだと感心させられますね。もちろん筆者もその一人なんですが。
おすすめポイントを解説する意味も込めて、NEATの特徴を列挙してみました。
NEATのおすすめポイントと特徴
1.コーディネートの主役になれる大胆にバランスがとれたデザイン
無駄がそぎ落とされたミニマムデザイン、かつシームに沿った形で縦に一直線につけられたポケットやクリースラインで縦のラインが強調された、クラシックな仕様。
一方で生地は極太ストライプだったり、艶が強いモールスキンだったり、コーデユロイは畝がめちゃめちゃ太かったり、ペンキがとばしてあったりと他ではあまり見ないような大胆な生地を使っています。
(ものによっては癖が強いと言った方が良いような、ほんとに他ではあんまり見られないような生地を使っています。資材用の麻袋みたいな生地だったり、上述のテントクロスなんかはそもそも洋服の生地ですらなかったり。)
加えて特徴であるインタックは野暮ったさを感じるくらいにかなり深くて存在感抜群と、とにかく主張が強め。ここもクラシックさが強く出ているディテール。
(デザイナーの西野さんは「味付けが濃い」と表現されています。)
特にワイドだと上述の通り裾幅24~25cmくらいあってめちゃめちゃ太いのですが、大味な生地のおかげで情報量が十二分にあり間延びした感じは全く無く、むしろそんな生地の面積が広いが故に迫力が半端ない。
そういった濃さというかアクの強さをクラッシックな、ドレッシーなデザインで大胆にバランスをとって成立させているという他ではなかなか見られない唯一無二感があります。
そんな感じでパンツ単体での迫力が凄いのでトップスはデザイン性が強いものよりはシンプルなシャツやカットソーなんかのプレーンなアイテムで合わせてパンツを主役にするコーディネートがベター。
また当然ですが、生地によって大きく印象が異なります。
個人的な好みも入るのですが、筆者がおすすめするのは生地に固さやハリがあって履いたときにシルエットが保たれるモデル。
せっかくの特徴的な美麗なシルエットを楽しみたいという意味もあるのですが、生地でシルエットを形作ってくれた方が体形に依らずにこのパンツ本来のバランスで履けるのでどんな方でも取り入れやすくなるかと思います。
柔らかめの生地でドレープ感を楽しむ、というのもありだとは思うので一概にはいえませんが、ハリコシがある生地の方が使いやすいです。
ちなみに筆者の着画を載せておきます。
1枚目はテントクロス生地のベルトレスです。

トップスはユニクロで1,290円に値下がりしていたので衝動買いした麻シャツ。それにしてもこのシャツ、シルエットも生地も文句無しの一級品。安過ぎです。
二枚目は綿麻ストライプ柄のワイド。

トップスはこちらもユニクロのドライカラークルーネックT 590円。
3枚目はコットンカルゼ生地のテーパードです。

うーん、やっぱどれもかっこいい。。
2.毎シーズン変わらないデザインと寸法
デザインと寸法が毎シーズン変わらないので一度自分のサイズが分かってしまえばその点では試着が必要なくなるので通販でも比較的買いやすい。
そして蒐集したくなるような感覚で、はまると生地違いで複数本持ちたくなる。
これは完成されたデザインがあってこその話でしょうけども、実際にショップスタッフさんに聞いても通販でリピートする人が非常に多く、インスタにあげた途端に注文がくるのだとか。
「デザインが変わらない」というのはブランドビジネスにおいて必須です。
高価な嗜好品を買って満足し、長く愛して使おうと思っているのに、次の期でモデルチェンジとか新商品とか言ってちょこっとデザインをいじり、自分の買ったアイテムがまるで過去の古くてダサいもののようにされてしまうと悲しいですよね。
そんなことをされるとブランドに対する信頼は育ちません。
というかブランドの価値とは顧客からの信頼そのものです。
だから長く愛されているブランドはアイコンになるような定番品を持っていますし、その定番品はセールにもかからないことが多いです。
NEATの場合はデザインや寸法を変えない一方で、着こなしに大きく関わってくる裾の処理をユーザー側に委ねています。
そうすると、「今回はノークッションのダブルで仕上げたから、次に買ったときはワンクッションのシングルにしよう」とかユーザー側でデザインのバリエーションを増やせます。
それが単なる生地違いで複数所有する以上のリピート買いの動機になります。
そして自分で考えて裾上げのバランスを考えるので、アイテムへの愛着もわくんですよね。
デザインと寸法を変えないことでリピート買いのハードルを下げ、ブランドへの信頼を築きつつ、生地の提案やユーザー側でのカスタマイズを必須にすることでリピート買いの動機にすると。
狙ってやっているのかは定かではないのですが(たぶんナチュラルにやってるんでしょうけども。。)、すごく上手なマーケティング戦略です。
3.二次流通価格が高め
生産数量が少ないので買いたいけど買えない人が多いため、メルカリやヤフオクで高値で取引されています。
古着の状態でもあまり値が落ちず、ものによってはほぼ定価だったり定価より高値だったり。
転売になってしまうとネガティブな話になりますが、二次流通価格が高いってことはブランド的にも悪いことではないはずです。
後で売れて代金が戻ってくると思うと、高価なものでも思いきって買いやすくなるんですよね。
例えが極端ですが、ロレックスなんかも二次流通価格が高止まりしていて(デイトナとか中古が定価の倍以上で値付けされてたり)価値が落ちない、もしくは落ちづらいことが競合との差異化要因になっています。
処分するときに高く売れるってのは購入の強い動機になります。
結果としてブランド価値を高く保てている、ということなんじゃないかと。
ちなみに筆者はメルカリをよく利用しています。ヤフオクよりはメルカリの方がユーザー数が多いので早く売れ易く、流動性を高められるのでメルカリ派です。
良いものを買って処分の仕方まで想定しつつ大切に使う、と考えると生き方が丁寧になりそうです。
ミニマリストとまでいってしまうと極端な話になってしまいますが、これも大量に物を持つことに抵抗感を持つ人が増えている昨今の情勢に合っているのだと思います。
4.着合わせと着用シーンを選ばない
コーディネートし易いという意味もあるんですが、ブランドのコンセプトで通りにこれ単体できちんとして見えるのでカジュアルにもドレスにも合わせられてTPOを選ばず着用可能。
さすがに派手な柄だったりワイドタイプだと難しいでしょうが、無地のテーパードやベルトレスならビジネスカジュアルレベルなら問題無くいけます。(実際筆者は会社にも履いていってます。)
お洒落なワイドパンツとして使えてビジネスシーンでもそこそこいけるって結構稀有なんじゃないかと思います。
また、TPOを選ばないってことは、要は頑張らなくて良い、楽ってことです。かっこつけて言うと「エフォートレス」。
昨年あたりからアパレルブランドからの化繊混のストレッチが効いたカジュアルセットアップの提案が激増しています。
これ着てみれば一発で分かるんですが、めちゃめちゃ楽です。
着心地という意味でも楽ですが、コーディネートも楽です。何せセットアップですからジャケットとパンツは既に決まっているので、インナーと靴のことだけ考えれば良い。
そしてスーツライクにきちんとして見える。ユニクロやGUでも積極的に展開されていてそこそこの質で安く手に入るのもポイント。
色んなTPOが存在する都市で生活するのに便利で、頑張らなくて良い、ってのは昨今のトレンドを象徴するポイントです。
めっちゃ頑張って我慢しておしゃれする、みたいな時代ではないってことです。そして、その頑張ってない感が自由さや豊かさ、ラグジュアリー感の表現につながってカッコ良くなる、というのが(なんだかめんどくさいですが)今の価値観なんだと思います。
しかし買うために並んだりして頑張ってる時点でそもそも余裕は感じられず、そういう意味ではあんまりかっこ良くないんですが、まあそこはあれです、あくまでファッションなんで着たときにかっこ良ければOKです。
まあ、ややこしい話抜きにして、カジュアルセットアップにしてもワイドパンツにしても、一度この楽ちんさを味わってしまうともう戻れませんね。
ユーザーの利便性が高いものが普及するのは当然の話なので、そこに素材やディテールのデザインでクラシックさや高級感を上手くのせられると使いやすいアイテム、ってことになります。
5.作り手の顔が見える
説明が難しいのですが、良い意味で個性が強くて他では見られないデザインとバランスだからなのか、アイテムから特別感というかデザイナーの情熱が伝わってくるんですよね。
そういったアイテムから伝わってくるイメージ以外にも、単純に受注会や販売時にデザイナーの西野氏がいらっしゃる機会もあり、裾上げをみてもらえたりします。
本当に嬉しそうな表情で販売されているのを見ると特別な買い物感が感じられてRoyalty(ロイヤリティ)が高まり、着用する時の満足感が高まります。
まとめ
以上、説明が長くなりましたが、
- 唯一無二の特徴を持ちながらもバランスがとれていて使いやすく、
- デザインとコンセプトがトレンドに合致していて、
- デザインを変えないので長く愛着が持てて、
- かつレア感もあるので価値が維持されていて、
- 作り手との距離の近さや作り手の情熱が感じられることでRoyaltyが高まる、
これらって嗜好性が強い商品のビジネス的な成功に共通する要素でしょう。
あと挙げるとしたらインスタに多く投稿されて訴求が進んだ、という点もあると思いますが、これってツールの話なので本質からは外れた話かと思います。
偶然や機会もあってこれらの要素が重なりあって成功を成し得ているのだと思います。
ここまで紹介しておいてなんですが、本当におすすめしたい一方で高価で販売数量が少ないので大変手に入れづらいアイテムです。
なので代替品になり得るものも探して(見つかれば)紹介したいと思います。
エフォートレスを良しとするトレンドや二次流通についてのトレンドについてもまた改めて語りたいと思います。
ではでは。