電機業界と会社の話

ハードもソフトも存在価値が無くなるテレビ

電機業界では、テレビの販売台数というのは昔からよく見られている伝統的な指標だったりする。

部材メーカーとかも含めたテレビの製造に関わっている企業は、北米とか、EUとか、アジアパシフィックとか、日本とか、地域毎にどのメーカーが一番台数を売っているかとか、月間で一番売れている機種はどれか、といったデータを常に参考にしながら事業計画を作ってたりする。

今ではもうピンと来ない感じはするけど、テレビって昔は家電の王様とか言われてて、販売単価が大きいし、使われる部品点数も多いからってことで家電の世界では製造の側からも注目されてきた商材だった。

今もそれなりに売上高を稼いでいるけど、かつて王様だった面影はほとんどなくなっている。

液晶テレビ事業の事業構造って今どんな感じなの?

まず液晶テレビ事業の事業構造を解説してみる。

液晶テレビのコストの6割は液晶パネルが占めていると言われている。ここが一番大きな特徴。

つまり、液晶パネルを安く調達できるかどうかで事業の成否が決まるということ。

液晶パネルの値段って市況に左右されるので、市場が好調で需給がひっ迫してくると値段が上がり、不調になって余り気味になると値段が下がる。

そして基本的に液晶パネルは、半導体と同じように技術向上に伴って価格は下落していく部材である。

こういう状態なのでテレビの製造販売事業は安定させるのが非常に難しい。

どういうことかと言うと、例えば最終製品市場がそこそこ好調な時に液晶パネル調達して製造したとする。

売り逃すと困るので、最初はそこそこの量を作りだめておく。

市況が好調に推移して順調に売れていれば問題ない。

しかし不調になって在庫が動かなくなると一気に液晶パネルの部材価格が下落し、安く液晶パネルを調達できたメーカーが店頭価格を下げるので

それに引きずられて全体的に店頭価格が下がる。

こうなるともう安くしないと売れないので値下げ合戦が始まって、一気に値崩れする。

日本の液晶テレビメーカーが壊滅した理由

そうすると液晶パネルを高値で買って製品在庫を作っていたメーカーはやばいことになる。

製品コストの大半を占める部材なので、原価を下げようにも下げられなくなり、一気に赤字に転落する。

これが日本のテレビメーカーが苦しんでいた理由の一つ。っていうか壊滅した理由の一つ。

パソコンと同じような事業構造になったわけである。

デジタル化で部品点数が大幅に減って商品としての付加価値が部材の方に移り、パソコンと同じように部材を買ってきて組み立てれば作れてしまう、日本の得意なすり合わせと技術力が必要な”モノづくり”ではなくなったということ。

パソコンのビジネスモデルは、Dellがやってたことを参考にすると分かりやすい。

製品コストの大半を部材が占め、かつ部材コストは急速に下落していき、店頭価格もそれに伴って下落する構造なので、できるだけ在庫を持たないこと、つまり買ってきたらすぐに組み立てて売ることが事業の肝になる。

部材を買ってきて間を置かずに売れば、店頭価格が下がる前に売れるので、そこそこの粗利を確保できる。

だからかつてのDellは受注生産という形でビジネスをして成功したのである。要はスピードと需要精度が全ての世界。

そしてテレビもほぼ同じ構造になっているということ。

壊滅したテレビメーカーの中でソニーが少し復活できた理由

で、壊滅したテレビメーカーの中で、このPCビジネスに近いことをやって若干復活したのがソニー。

ソニーはかつてPCのVAIOで受注生産のビジネスをやっていた経験があり、システムなども含めてノウハウがあったので、それをテレビ事業へ横展開できたから利益が出せるようになった、ということらしい。

受注生産まではやってないけども、要は需要予測の精度を極限まで上げて、なるべく在庫を持たず、素早く作って素早く売る、ということを地道にやって利益を出せるようにしたそうな。

まあ、ちゃんとそれが実現できれば理屈の上では利益が出るのは分かるけど、受注生産無しでそれをやるってのは、つまりは外さない需要予測をやってるってことでしょ。それってかなり緊張感のあるオペレーションだろうし、なんなら日次くらいのサイクルで製販をやってそうで、マジ怖い。ド根性で頑張ったんだろうなぁ。

そんなこんなで壊滅し、一部が細々と生き残っている日本のテレビメーカーだが、今後昔のように復活するってことはもうあり得ない。

その色々理由はあるけども、”放送電波を受信する装置” の価値が下がり続けるというのが一番大きいんじゃないだろうか。

もはやテレビ放送という技術自体に価値が無い

放送と通信の融合ってちょっと昔に言われてたけど、今やもうとっくに融合して溶け合ってるような状態

今は放送(テレビ放送)と通信(インターネット)の動画ってほぼ違いが無くなってるでしょ?

ネットフリックスとか4K動画も普通に見れるし、品質面ではほぼ差は無いに等しい。

4Gがつながってればスマホでも動画はサクサク見れる。

まあそうは言ってもネットだと通信速度が若干不安定だったりして放送の方が安定してる感はあるし、

テレビ放送だとタダで見れるし、テレビの操作は簡単だからお年寄りには良いのかもしれない。

逆に言うとそれくらいの差しかなくて、安定性はそのうち解決するだろうし、お年寄りに優しいなんて話は時間が経てば消えてなくなる話。

時間が経てばテレビの操作しかできないお年寄りはいなくなるので。コストの話なんて今でもあんまり意識されてないから、もはや関係ないかもしれない。

テレビ放送ってのは、他に安く手軽に動画を視聴者に届ける手段がなかったから価値があったわけ。

“テレビ放送” しかできないことができたから価値があったの。でも今やネットで同じレベルのことができてしまう。

むしろネットの方が今やコンテンツの量でも質でも圧倒している。

偏向報道を垂れ流し、全く面白くないお笑い芸人がわめいてるバラエティと、痛々しいドラマくらいしかやってない、そびえたつクソのようなテレビ放送なんて見る気する?

スポーツとアニメくらいじゃね?見る価値あるの。あと個人的には子供向けのNHK Eテレは良い。無くなると困る。

特に民放なんてのは報道が仕事ではなく、彼らの仕事は集客である。適当にわめいて注目を集めて集客して視聴率を上げるのが仕事なので、そもそもコンテンツの品質なんてものは二の次なのである。

まあそこまでボロクソに言わんでも、テレビ放送に相対的に価値が無くなっていて、今後それが加速するのは揺るぎようがない事実。

今やどっちが便利か、なんて語る必要もないくらい圧倒的にネットの方が便利である。

ということで、家電業界の黄金時代を築いたテレビ、というか放送電波受像機の将来は暗い。

8K放送なんてものは何の足しにもならないのは明らかで、暗いどころか将来性は無いに等しく、せいぜい使い易い大きなディスプレイ程度の位置づけにしかならない。

そんな中でおそらく差別化できるとしたら、画質とかの感性に訴える領域しかないだろうし、つまりは一部のマニアに向けての商売にならざるを得ないんだろうと思う。

今日も暗い話でごめんやけど、テレビ放送、というかマスゴミが力を失うってのは

消費者にとっては間違いなく明るい未来だと思うので、暗いだけの話でもなかったりする。

以上です!

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