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ジャパンディスプレイが日本のゾンビ企業の代表みたいになってしまった背景を整理してみた 後編

債務超過に陥って瀕死の状態の日の丸液晶 ジャパンディスプレイ(以下JDI)ですが、中国の大手投資会社が出資を見送るとの報道がありました。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190928-00305373-toyo-bus_all

前編では、国のお金を潰れそうな会社の救済に使うことが何故ダメなのか、そのダメなことを行うことになった背景をまとめました。

後編ではジャパンディスプレイの経営についてまとめます。

極度の高齢化企業

聞いた話でしかないんですが、設立当初の時点で営業部門や管理部門は半数近くがジェネラルマネージャーだったとか。ジェネラルマネージャーってのは要するに部長です。ただそんなに部があるはずもないので、部長級の位をもった部下無し管理職がうようよいたってことです。部長が担当者の資料作りや数字まとめの仕事を奪っていくみたいな状況だったそうです。平均年齢はたぶん50歳を超えてたんではなかろうか。

ちょっと大げさに表現している可能性もありますが、何それっていうもう冗談としか思えないような状況。当然ですが、その部下無し部長さん達は元々日立や東芝、松下電器、ソニーといった大企業の液晶部門にいた人達だし、待遇はその当時をある程度継承しているでしょうから、年収1,000万を超えるくらいのお高いお給料はもらっているわけです。嫌な会社やな~~。普通に考えてまっとうに仕事をしているようには思えません。

なんでこんなことになったのか。筆者の想像ですが、要するに若い人はJDI設立の前に辞めていて、辞めたくても辞められない、行き場の無いおっちゃんばっかりになった状態でJDIが設立されのではなかろうかと思います。

というか元々は各社で赤字続きのお荷物部門で、赤字なのに競争環境についていくには継続的な設備投資が必要になるという悪夢のような事業を各社から集めてできた会社です。統合前の段階で新人採用なんて絞っていたでしょうし、脱出できる若い人はとっくにそうしていたでしょう。

経営の話、なんて大げさなことを言わなくても、まあこの時点で厳しいですよね。。

OLED(有機EL)を持っていない

設立の前後から、次世代ディスプレイとしてOLED(有機EL)が注目されていたというのはディスプレイ業界では常識でした。ただOLEDより液晶の方が性能面で優位であるからOLEDへの置き換えは進まないという主張もあり、完全にその評価は固まっていませんでした。そんな状況だったので、経営判断として液晶のみでやっていけると言えるだけの根拠も無く、中小型のディスプレイ専業でやっていく以上は並行してOLEDへの投資もやる必要があるというのがまともな見解だったと思います。事実として韓国、中国メーカーはそうして開発を継続していたから今があるわけです。

しかしJDIはそもそも各社の液晶部門のみを切り離して設立した会社なので、OLED(有機EL)の技術も量産ラインも持っておらず、量産ラインを作ろうにも技術も金も無いという状態で設立されています。(JOLEDと戦略提携をしており一時は子会社化を検討していたものの、これもやっぱりお金がなくて断念。)

トレンドを見る力が無かったのか。ディスプレイ業界で飯を食っている人達だし、普通に考えてOLEDが必要ってことぐらいは分かってはいたんでしょうけども、OLEDが絶対必要とか言い出すと話のハードルが上がってしまうので、とにかく生き残ることを最優先してOLEDは後回しで統合を進めた、ということなんでしょう。

ケイパビリティギャップとか難しいことを言わなくても、普通にその業界で仕事していれば分かるような技術トレンドだったり、今後世の中でどんなディスプレイが必要とされるかという当たり前の顧客目線があれば分かるような話なのに、見て見ぬふりをして自分達の都合で話を進めてしまったということでしょう。よくある話ですが、この時点でもうヤバいわけです。

リストラできない

2019年6月になってようやく工場の操業停止を含むリストラを発表しましたが、それまではリストラどころか拡大路線を敷いていました。

JDIの経営悪化の大きな要因の一つが、売り上げのモバイル分野への過度な依存であると言われていますが、JDIは車載用の液晶等、物量は比較的小さいけども高いシェアを誇るカテゴリー(つまりは顧客から高く評価されている製品)を持っており、そういった分野に特化していくという選択肢もあったはずです。但しそれは売り上げが大きく落ちて利益率が良くなるという話なので大幅なリストラが必要になります。しかしそれはやらなかった。取締役会の中では、工場の操業停止を含めたリストラに関してはあり得ないといった雰囲気であったと、元執行役員の伊藤嘉明氏もインタビューで仰っています。

その理由は想像しかできませんが、前編で言ったように、そもそも国のお金が入った時点で政治的な意図や経済産業省をはじめとした一部の利害関係者の都合が優先されて、まともな経営判断をできるようなシチュエーションではなかったであろうことは容易に想像できます。国策でやった事業でリストラなんかしたらアベノミクスのイメージが悪くなる、みたいなね。

で、死ぬ寸前になってようやくリストラをやってるわけで。もっと早くやっていれば別の道もあったでしょうに。

幼稚な数量頼みの経営判断

あえて幼稚と言い切っていますが、たくさん売れれば儲かるとか子供でも分かるような理屈です。上で言ったように、選択と集中をせずに、工場の操業も続けたいのであればモバイル向けを続けるしか道はなく、なまじiphoneなんていう身の丈を超えた莫大な数量が出る製品に採用されて一発当たっちゃったもんだから依存せざるを得ないわけです。iphone向けだけで売り上げの50%を超えてるって、どう考えても身の丈に合わない相手への依存です。それが無くなったら倒産するんですから。

どう考えてもリスキーなのにそんな話に乗ってしまうってことは、経営ビジョンが無いからその場凌ぎで美味しそうな話に飛びついてしまうってことです。他にやりたいことや、やるべきことがなければ断る理由が無いですからね。判断もくそもありません。それで50%も生産キャパを取られれば、今度は他のことができなくなって、iphoneのことしか考えられなくなって中毒になっていくわけです。

そんなものは経営ビジョンとは言いません。思考停止して易きに流れているだけの、子供でもできる判断です。

そんな話が経営戦略の根幹になっているような会社ですから、石川県の白山工場の建設なんていう話も通るんでしょう。iphoneのために1,700億円かけて白山工場を作ったものの、iphoneのメイン機種のディスプレイはOLEDに置き換えられて液晶が要らなくなって無期限操業停止中とか、なるべくしてこうなったとしか思えません。

個人の立場で考えることとできること

・年功序列で偉くなったおじさん達を大量に抱えて船出をして

・当然必要な技術にはきちんと投資せず

・痛みを伴うリストラはせず

・自分達が生き残ることが最優先で

・どういった価値を世の中に提供するのかといった明確なビジョンはなく

・中毒になることが分かるはずなのにその場凌ぎで量に依存する

冷静に考えれば、「どうにかなるだろ」「こういう条件が揃えばいけるはず」といった楽観的な前提をベースにした戦略がまともなはずがないんです。

当事者からすると、どれもこれもその場の判断としては「これしかなかったんだ、仕方無いじゃないか」という話なんだと思います。でもね、本当に心の底から当事者達が「これで会社が成長できる」と腹落ちできる戦略だったんでしょうか。自分のお金を投資してでもやるべき戦略だと本当に思っていたのでしょうか。経営者の皆さんは本来優秀な方のはずなので、しがらみ無しで考えれば「まずいだろ」と思ってたんじゃないでしょうか。

色々な事情があったとはいえ、筋の悪い話をいくら時間をかけてこねくり回しても、ダメなものはダメなんです。であれば早くやめるべきなんです。

従業員の方々や株主の方々の憤りを想像すると、本当に気の毒に思います。

自分が関わっている事業に対して、当事者である自分が「これはまずいんじゃないか?」と思う何かがあるのであれば、たぶんそれは当たっています。一刻も早く何とかするか、撤退するか、行動を起こしましょう。そういうときってたぶん時間は味方になってくれません。

ではでは。

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