電機業界と会社の話

サステナビリティってのは環境問題の話じゃない

最近、”サステナビリティ” という単語を良く聞く。

日本語に訳すと”持続可能性”。”持続できる”という意味の言葉。

この時点で「は?」って感じ。いや何が?って思ったそこのあなた。ごもっとも。主語が無いんだよ、主語が。だから意味がわからんのですよぉ。

ということで今日は”サステナビリティ”の解説。

サステナビリティとは足りなくなることと見つけたり


そもそもこの ”サステナビリティ”、バズすぎてるというか言葉が一人歩きしてて、そもそもの何の話なのか?よく分からなくなっているような気がする。


地球温暖化とか

異常気象とか

環境問題とか

海洋汚染とか

CSRとか

ビーガンとかオーガニックとか

紙のストロー使えとか

レジ袋有料化とか

もうなんか色んな話が入り混じってて、さっぱりわけ分かんなくなってる感じ。

エコと何がちがうん(´・ω・`)と聞きたくなる気持ちは分かる。とってもよく分かる。

サステナビリティとは一言で言うと「足りなくなる」という話。

誤解を恐れず言ってしまうと、今まではお金さえ出せば大抵の ”モノ” は手に入った。

家でも、服でも、車でも、食べ物でも、エネルギーも、資源も、水も、なんなら人(労働力)も、お金さえあれば基本的には好きなだけ ”モノ” は買えた。

でもこれからはそうじゃなくなる。お金を出しても買えなくなるのである。何故ならあらゆるモノが足りなくなるから。

そもそもお金を出せば好きなだけモノが買えたのは、世界全体のほんの一部の先進国が富を独占してたから。アメリカ、日本、欧州の一部の先進国という世界人口では10%程度の国が、世界のGDPの約半分を占めていたので、先進国はお金を出せばエネルギーも資源も好きなだけ買うことができたのである。

しかしこれからは話が変わる。

新興国の人口が増加し続け、経済も急成長するから。要は資源の買い手が爆発的に増えて、先進国だけで独占できなくなる。需要が増えて、競争相手が増えるのである。

特にインドが凄いことになる。

中国とインドは今でもこの2国だけで世界人口の約40%を占めるお化けみたいな人口大国だけど、2030年までにインドの人口が中国を超えると推定されている。

さらに中国は2030年あたりをピークに人口減少局面に入るが、インドはそれ以降もモリモリ増える見込み。ついでに経済成長も続く見通し。

要は中国並みの大国がもう一つできると想像すれば分かりやすいかも。

なんというか例えば、少し前までただでさえ中国人観光客で混んでた日本の観光地に、さらに倍の観光客がやってきてそれが全部インド人、みたいな状態を想像してみるといい。ホテルも飲食店もキャパに限界があるわけで、全然入れないし予約もとれまへん(>ω<)みたいなことになるのである。

豊かになれば “美味しくて” “安全な” ものが食べたくなるのは当たり前

インドや中国に限らず、新興国の人口増加と経済成長は続き、ついでに世界最強国アメリカも先進国の中では例外的に人口増加が続く見通し。

世界人口は、1960年で30億人、1987年で50億人、2020年現在で77億人と凄い勢いで増え続けており、2050年には100億人を突破するとされている。

経済的に豊かな人が増えれば、それだけ食料もエネルギーも資源も欲しい人が増えるのは当然の話。

特に食料と水がやばい。何でもいいならもしかしたら足りるかもしれないけど、”安全な” という制約が付くと途端にハードルが跳ね上がる。「そのへんの草でも食っとけ」なんて話はあり得なくて、豊かになったら安全な食料が欲しくなるのは当たり前の話。さらに “フェアに作られた” というクリーンさも求められるともっとハードルが上がる。

農地には限りがあるし、生産には人手も水も必要になる。簡単には穀物の生産は増やせない。環境に配慮しつつとなるとなおさら難しい。

日本にいると意識することは無いけど、水資源を巡っての紛争は人類の歴史では珍しくも何ともない当たり前に起こってきた話だし、今でも世界中で頻発している。

身近な話でも、近年色々な生活必需品の価格が上がっているのは穀物や綿花、羊毛の取引価格が上がっているからであり、資源の争奪戦は既に始まっているのである。

新興国に資源を輸出する義務なんて無い

新興国が限りある資源を “身を削るように” 先進国に輸出していたのは、今までは外貨を稼ぐ手段が他になかったからであって、当たり前だけど資源の加工技術を持てるようになれば国内で加工して輸出した方が儲かる。

他に外貨獲得の手段ができて、更に国内で消費市場が立ち上がってくれば、なおさら輸出する必要なんてなくなる。

どこの国にも、資源を輸出する義務なんてない。他に外貨獲得の手段があるなら、自国民を飢えさせてまで食料を輸出するとか、普通の国ならあり得ないでしょ?

そんな感じで世界的な需給ひっ迫は確実なので、食料や資源の”囲い込み”が顕著に起こると想定されている。

国際問題になるのは必然だし、特に日本みたいな資源を持ってない国はめちゃめちゃ困る。

特に食料なんてのは生きるか死ぬかの話なので、ぶっちゃけ近い将来に資源の争奪戦争が起こってもおかしくないわけである。人類の歴史を見返してみても、資源の奪い合いで戦争が起こったとか珍しくも何ともない話なので、リアリティの無い話ではない。

しかし今マジで戦争なんてことになったらヤバいわけで、奪い合うようなことにならないようにしましょうね、限りある資源を平和裏に分け合いましょうね、そのためにどうしようか考えましょうね、というのがサステナビリティとか、SDGs(持続可能な開発目標)とか、日本もやっている二国間交渉の背景。

世界大戦なんて避けたいわけですよ、マジで。

足りないのが当たり前の日常

ということで、しばらくするとは色々な資源が「足りない」のが普通になる。

当然企業活動もそれを前提に考えなきゃいけなくなる。

今までみたいに調達部門に「買っといて」と言っとけば必要なものは全て揃う、なんてことはあり得なくなる。再利用なんてことも設計段階から考えなきゃいけなくなる。

ついでにビジネスの視点だと、人も足りなくなる。ちゃんとした教育を受けた優秀な人ってのはどこの国も会社も欲しいんだけど、都合よく無尽蔵に生み出せるだけではないので、これも立派な資源。

ということでモノも人も足りなくなるんだなぁと。サステナブルとかサステナビリティとか、バズってる言葉の背景を理解して世の中を見渡してみると色々見えてきて面白い、という話でした。

おわり。

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