電機業界と日本の会社のよもやま話

有機ELって今どうなってんの?という話

有機ELってあんじゃん?ちょっと古い話かもしれないけど、液晶に代わる次世代ディスプレイとか言われてたすごく薄いディスプレイ。

言われてたって過去形なのは、最近だとそうでもなさそうな感じだから。

少し前の話なんだけども、以前少し調査して「今はそんなことになってんだー」と思ったので書き留めておこうと思う。

内容としては技術開発的な話ではなく、ビジネス寄りの話ですのであしからず。

有機ELってなんであんなに盛り上がってたんだっけ?

薄型テレビが出始めた10数年前、液晶ディスプレイとプラズマディスプレイ(←なつい)でシェア争いをしてた時期に

「次の薄型ディスプレイは有機ELだ!」

「有機ELこそ真の薄型ディスプレイだ!」

とさかんに言われてたのを鮮明に覚えている。一応筆者は理系で、製造業で働く人間なので。

マジ日本をあげて盛り上がってたよね、あの頃は。材料系の専攻でも有機ELに絡んだ研究やってると、なんかそれだけで最先端感を漂わせてたし。うわやべぇ、日本の未来作ってんじゃん、みたいな。

有機ELが次世代ディスプレイの本命と言われてたのは、主に液晶と比較して

  • 自発光ディスプレイなので黒がくっきり表現できる(=コントラストを高くできる)
  • 自発光だからバックライトが必要無いので、薄く作れる
  • 視野角が広い(斜めから見てもキレイに見える)
  • 応答速度が速い
  • 色の再現性に優れる(色がはっきり綺麗に映る)
  • LEDなので低消費電力
  • フィルム状にできて折りたためる

といったところが優れているから。原理的に液晶より高性能なディスプレイなのです。

「液晶すげぇ」圧倒的才能を凌駕した努力

なんだけども、有機ELは素子の寿命が短いとか歩留が悪いとか色々と技術的な課題が多く、量産できずにごちゃごちゃやっているうちに物凄い勢いで液晶側の技術開発が進んで弱点を克服。

視野角も広くなったし、色も綺麗になったし、凄く薄く作れるようになったし、応答速度も速くなったし、コントラストも高くなった。

お店に行って最新のiphoneの液晶モデルと有機ELモデルを見比べてみるといい。素人目には全然区別つかないから。どっちも凄くキレイ。(やっぱ有機ELの方がイイヨネ!色再現性が全然チガウ!とか言ってる男子がいたら専門でやってて見慣れてるか、痛い子か、どっちかだと思ってOK。)

むしろ消費電力は液晶の方が低くなってるくらい。

一応、有機ELの方が原理的に黒がはっきり出せるから液晶より高コントラスト、という優位性はあるものの、それ以外は「有機ELでないとできない」みたいな違いはほぼ無くなっているのが現状。

コストだともう圧倒的に液晶が安いし、むしろ有機ELが勝てる理由が無くなってるくらい。

凄いよね、液晶。原理的な弱点を克服しちゃうんだから、人間の創意工夫の力ってマジ凄い。

いつのまにかあんまり有用性が無くなっちゃった有機EL

そんなこんなで今や有機ELは量産できるようになってるんだけど、使われている分野は一部に限られている。

趣味性の強い一部の高級テレビでも使われているけど、一番需要が多いのがスマートフォンの高級機種。

スマホの高級機種で採用されている理由は、液晶より有機ELの方がスマホのバッテリーの容量を大きくできるから。

どういうことかというと、液晶より有機ELの方がほんの少~しだけ(数mm程度)薄くできるので、スマートフォンって薄い方が消費者受けが良いし、何よりディスプレイを薄くできると筐体内部のスペースをバッテリーに回せるのね。ディスプレイを薄くできると、太くて大きなバッテリーを積めるのでバッテリーの容量を大きくできて、電池の持ちが良くなるということ。

スマホの高級機種ってiphoneだと今や10万円を超えるような高価なものなので、液晶より多少コストが高くなっても特に問題にならないし、電池が長持ちした方が売れるので、有機ELが採用されている。

一番需要の多いスマホ高級機種で採用されているのは、そういう理由。

というか誤解を恐れず言ってしまうと、有機ELが液晶より明確に優れていると評価されているのは ”少しだけ薄くできる” ところだけってこと。原理的には液晶に負けてないけど、実需の世界では事実としてこういう評価になってるということ。

従いまして圧倒的なコスト競争力を武器に「これで十分やん」な液晶ディスプレイの天下は今後も続く見通し。

(逆に有機ELが液晶並みに安くなれば液晶に勝てるって話なので、コスト削減に伴って有機ELのシェアは広がるけど、しばらくは液晶には勝てへんやろ、ってのが大方の見方。)

誰も予想しなかった液晶の圧倒的勝利

いやさ、これ凄くない?10数年前にはみんな「次世代ディスプレイの本命は有機EL!液晶より圧倒的に優れている!」って信じて疑わなかったじゃない?

たった10年しか経ってないのに「有機ELなんてちょっと薄いだけ。まあバッテリー様のスペース作るのにええかもな。」ってことになってるわけですよ。

こんな予想をした人は、筆者の知る限りゼロ。当時誰も分からなかった未来。まさかこうなるとは、って感じ。

しかしディスプレイの開発と製造は巨額の研究開発費と設備投資が必要な世界。関わってる企業は大変だよね。誰も分からない中でこんな未来も想像しながら投資戦略を決めなきゃいけないのが企業のトップ。逃げられないからね。当たり前だけど厳しいよね。

まあ後出しで言うのはフェアじゃないんだけど、スペック競争ってのは疑ってかかった方が良いのでしょう。カメラだったらそんな高い画素数いる?って話とか、テレビ放送のハイビジョンが4Kになって8Kになるとか、それって世の中の便益につながるんすか?と少しでも疑問に思うことがあるなら立ち止まって考えるのが良いんでしょうね。あったらいいねっていうスペックなんていくらでも考えられるんだけど、果たしてそれが一番必要なことなのか?という。

「世の中の役に立つことをする」のが企業活動の基本だし、ここから離れた議論になってたら大抵やばい。

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ちなみにそんな感じで10数年前に期待されてたほどには美味しくなくなっちゃてる有機EL。しかしそうは言っても高付加価値な高級スマートフォンの領域で戦って勝ちたいのが高コスト体質の日本の企業。

一応日本のディスプレイ企業(というかJDI)も有機ELを作れないと、高級スマホ(つーかiphone)で使ってもらえなくなる!やべぇ!ってことで有機ELを作ろうと頑張ってるけど、中小型の有機ELだと圧倒的にSamsungが強くて今更どこも勝てねーよ、って状況。

投資体力的には当然のこと、技術的にも全然勝てないところまで引き離されてるため。中国企業も頑張って開発してるみたいだけど、有機ELのSamsung一強はしばらく揺るがない見通し。

ボロクソに負けてる現在進行形の敗戦から学ぶことって色々あります。

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