ファッションの話

また失敗しそうなゾゾスーツ2と体形データの収集の話

最初の取り組みが大失敗に終わったゾゾスーツ(ZOZOSUIT)だが、先日ゾゾスーツ 2(ZOZOSUIT 2)が発表されていた。

外部リンク<Fashionsnap.com “ZOZOが「ゾゾスーツ 2」を発表、サイズ計測のマーカー数が約50倍に”>

前回のときに盛大にすべったし、その後社長も変わったし、会社自体も身売りしたし、状況も大きく変わったのでもうすっかり諦めたのかと思ってたが、実はまだ継続していたことに素直に驚いた。たしかに、1回くらいの失敗で諦めるなら最初からやらない方がマシである。勝算があるのなら軌道修正してやり続けるのが正しい姿勢だろう。

失敗の軌道修正はした様子だが?

で、ゾゾスーツ2の話はあんまり話題にもなっていない感じだが、一応前回からの軌道修正はしている様子。

同社はゾゾスーツ 2をファッションだけでなく、高精度の計測データが求められるスポーツウェアやアンダーウェアなどの開発やサイズ提案をはじめ、フィットネス、予防医療、ヘルスケア、ゲームといった様々な分野での活用を想定。1年以内の一般配布を目指し、ゾゾスーツ 2や3Dサイズを計測する「ZOZOMAT」を活用した新サービス開発のためのパートナー企業の募集を開始した。

引用元 <Fashionsnap.com “ZOZOが「ゾゾスーツ 2」を発表、サイズ計測のマーカー数が約50倍に”>

前回は得られた計測データを元にサイズ提案などに活用していたが、今回はそれ以外にも展開するという。要は得られたデータを欲している企業に販売するということだろうと推測する。

今世の中に出回っている個人情報にも個人の体形データが紐づいたビッグデータって存在しないはずなので、もし実現すれば価値あるデータを独占でき、大きな利益が得られるとは思う。

しかし上手くいかないと思う。だって何故わざわざZOZOの養分になるために手間かけて体形データを測るのか?何のメリットがあるのか意味不明。わざわざ測定キット(ゾゾスーツ2)を取り寄せるために注文して、着て、スマホをセットして、計測して、ZOZOに送ってあげるメリットがさっぱり分からない。

莫大なデータが集まるからビッグデータとしての価値があるのであって、データが集まらないなら価値は無い。よって失敗すると思われる。

自働でデータを集められないとダメなデータビジネス

そもそもこういうIoT的な機器とかサービスってのは、”自働で” データを吸い上げるから意味があるのであって、人力でせっせと計測してもらうことが前提とか、センスがない以前に全然意味分かってないんじゃないの?としか思えない。申し訳ないのだが頭が悪いとしか思えない。ZOZOってテック系企業のようなフリしてるけど、あんまり技術に明るくない人達の集まりなんじゃないの?と思えてしまう。

いやいやそんなことはない!自分の体形データが分かれば、自分に合った服のサイズが分かるし、便利だ!だから個人がわざわざゾゾスーツを取り寄せて体形データを測る意味はある!という意見もあると思う。

しかし実際はあんまり意味が無い。というか意味がなかったから前回のゾゾスーツは失敗した。当時の前澤社長も「(想定以上に)ゾゾスーツを着てもらえなかった」と発言されているそうな。

消費者に必要とされない体形計測スーツ

考えれば分かる話なのだが、ゾゾタウンで売っているのはほとんどがカジュアル服だ。カジュアル服のサイズなんて、せいぜいS、M、Lの3種類から選ぶ程度の精度しか必要とされておらず、細かく計測してシビアにサイズを選ぶ必要性が無い。

そして服好きの人なら分かると思うが、洋服の着こなしに成熟すればするほど、服のサイズ感なんて袖を折るとか丈を詰めるとか、自分で工夫して着こなすことで解決できてしまう。というかその工夫が趣味としての洋服の面白さの一つである。じゃなきゃ古着なんて着れない。だから洋服に興味のある人達にとってはゾゾスーツなんて意味無いのである。

特に昨今はオーバーサイズがトレンドだから余計にサイズのシビアさなんて求められていない。

仮に一昔前みたいなピタピタフィットがトレンドに返り咲いたとしても、ストレッチ素材があれば解決するし、逆にストレッチ素材じゃないピタピタの服なんて着ようと思わないでしょ、普通の人は。ぎっちぎちに締め付けられるのが好きな変態さんもいるかもしれないけど、会ったことは無い。

ということで消費者にとっては自分が着る洋服のためにゾゾスーツみたいなもので細かく計測するメリットが無いのである。

そもそもゾゾスーツをわざわざ取り寄せて着てみよう、なんて人はモノ好きか服に興味のある人のどちらかである。モノ好きな人の数なんて大して多くないから、その人達の体形データだけを吸い上げても価値にならない。そして上述の通り、服好きにとっては意味の無い行為だから、ほとんどの人はゾゾスーツを着ない。

筆者も着ようと思わない。時間の無駄だもん。

だから前澤社長が言うように「ゾゾスーツを着てもらえなかった」のである。

データビジネスはデータの集め方が事業の肝

体形のデータを大量に集めようと思ったら、めんどくささを乗り越えてでもゾゾスーツ(計測スーツ)を着てもらうメリットを消費者に与えないと上手くいかないことが分かったわけだが、そこんとこをどうしようとしてるのか、報道されている話だけではさっぱり分からない。事業の根幹にあたる話なので、真似されないように表に出していないだけ、って可能性もあるけど、どうなんだろう?改善できているとは思えないのだが。。

というかスーツを着てもらって計測という方法自体が、お金払って着てもらうくらいのことをしないと、普通の人は着てくれないんじゃないかと思う。

もしくはこういうIoT的なデータ収集って “自然に” “自働で” やれることが肝なので、街中や商業施設の中に赤外線センサー(服が透けるやつ)を設置しといて自働で集めるとか。いやまあ人権的にあかんやつやから無理ね。というか犯罪ね。

さっぱり方法が思い浮かばない。

体形データの収集自体は、まだGAFAも含めて他の誰もやれてない意義あることだと思うんだけど、一番肝心で一番難しいデータ収集のスキームがまだダメっぽいのでゾゾスーツ2も失敗するんじゃね?という話でした。

おそらくこの “体形データの収集方法” を確立できたところが勝つんでしょうね。

以上っす。

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